【リレー連載】vol.8 おおたはらみほこさん(スペシャルティコーヒー店経営)後編

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2016.05.16

vol.8 おおたはらみほこさん(スペシャルティコーヒー店経営)

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スペシャルティコーヒー店「COFFEA EXLIBRIS」(下北沢)、「kettle」(東府中)の2つのお店をご主人と営むみほこさん。
この連載で紹介しているのは、元建材店だったという「kettle」。
コーヒー豆を焙煎する香り、ケーキが焼きあがる香り、さまざまな香りがただよう、幸せな気分になれるコーヒー店です。
後半では、普段見られない“裏の”キッチンにおじゃましました。

前編はこちら

 

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建物が大きくていりくんでいるので、ナゾの扉がたくさんあって、
まるでワンダーランド。ケーキが焼かれるキッチンは、店内のコーヒー用のキッチンとは別に客席の奥の方にありました。昭和の民家らしい間取りを残し、キッチンのとなりにはそのままお風呂場が。壁や床のタイルも個性的。

 

みほこさんがお店のためのケーキを焼く場所は、店の一番奥にある扉の向こう、3畳ほどの細長いキッチンで。
もともとは、お勝手や風呂場だったようで、タイルが貼られた壁や小さな水道にそのあとがみえます。
ここに業務用のオーブンやテーブルをおき、DIYで棚板をとりつけ、使いやすいようにと模様替え。
東側にあるためたっぷりと光が入り、朝は特に気持ちがいい場所。

みほこさんの午前中の日課は、2階にある自宅から階段をおり、まずはコーヒーを1杯飲んで、このキッチンでケーキを焼くこと。
レモンタルト用のレモンクリームを煮詰めたり、チーズケーキ用のクリームチーズを練ったり、季節のフルーツをどうしたらいちばんおいしいケーキにできるかを考えながら、毎朝手を動かしています。

一方、ご主人の一隆さん。
キッチンのとなりにある土間で、ドイツ・プロバット社製の焙煎機の前に立ち、黙々とコーヒー豆の焙煎をされています。

焙煎機に豆を入れたらそれでOKではなく、さまざまな個性を持つ生豆にたいして火力操作、時間などデータを控えつつ、変化していく豆の匂いや状態を人の目、鼻、耳、五感をフルに使う、とても感覚と経験が必要な奥深いお仕事。
焙煎後は、カッピングといわれる方法で必ず味見をします。

ここで、「スペシャルティコーヒーってなんですか?」という、ものすごく初歩的な質問を。
近頃、コーヒー人気もあってか、スペシャルティコーヒーという言葉よく聞きますよね。
うかがうと、「ただのコーヒーではなく、とても美味しいコーヒー」のこと。
え、そんなシンプルな定義なんですか!?

そもそも、美味しいコーヒーってどんなコーヒーなんでしょうか?
「味がきれいで甘く、とても飲みやすくてワインのようにフルーツや花、ナッツ、チョコといった特徴的な風味特性があるコーヒーのことです」
と、一隆さん。
では、どのように美味しいコーヒーはできるのかというと、キーワードは「From Seed to Cup」。
「“種からカップまで”という意味なんですが、コーヒーは生産者が1粒の種を植えるところから始まり、栽培、収穫、生産処理をして輸出されるんですね。それをロースターが焙煎し、バリスタが抽出してカップに注ぎます。
その間、人手の関わる工程がコーヒーの場合200以上ありますが、その全ての工程で手を抜かず丁寧に作られ、最後にカップに注がれたコーヒーが美味しかった時に初めてスペシャルティコーヒーになるんです」。

長く厳しい工程を経て、私たちが飲んだ時に「美味しい!」と感じたものがスペシャルティコーヒーなんですね。
お店には10か国前後の異なる生産国の豆がありますが、今回はグアテマラとコスタリカを使った「polaris (ポラリス)」という季節の深煎りブレンドをいただきました。
使うのは、コーヒープレス。
金属フィルターで濾すプレス式だと、コーヒーのアロマオイルを漉さずに抽出できるので香りと舌触り、バランスの良い美味しいコーヒーになるんですって!
雑味やいやな酸味がなく、ダークチョコレートやダークチェリーのような風味があって、後味はすっきりフルーティ。
コーヒー好きの取材チームも「あれ、コーヒーってこんな味だった!?」と、目からウロコなおいしさ。

1杯のコーヒーと作りたてのケーキ。
Kettleの小さなキッチンからは、大きな幸せが生み出されていました。

 

コーヒーのおいしい淹れ方

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使うのはコーヒープレス。350mlのプレスの場合、中挽きの粉16g、お湯は280cc使います。淹れ方はとっても簡単!

  1. 16gの中挽きの粉をプレスに入れます。280ccの沸騰したお湯を注ぎます。角度をつけてガラスに当てながら注ぐと対流が起こり、粉にお湯をまんべんなく行き渡らせることができます。
  2. ここでタイマースタート!熱湯を注ぎ始めたら、すぐに4分計ります。
  3. 4分経ったらプランジャーを静かにプレスしカップに注ぎます。
  4. 最後の一滴まで注いで、どうぞ。

私の定番めし「ミモザエッグとお好みオープンサンド」

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<作り方メモ>

「まず、ミモザエッグを作ります。用意するのは、卵5個、マヨネーズ適宜、こしょう少々です。
鍋に卵とひたひたの水を注ぎ、火をつけてから12分ほど茹でます。途中、沸騰したら弱火にします。
茹で上がったら、殻をむき黄身だけをボールに取り出しフォークでつぶします。白身は粗みじん切りにして、黄身と一緒にマヨネーズとこしょうをして混ぜます。お好みでピクルスやカットしたトマトなど入れてもおいしいですよ。
好みのパンをトーストし、季節の葉野菜やハムと一緒にミモザエッグをのせていただきます。
府中には、JAのスーパーや、農家さんの無人販売も点々とあり、新鮮な朝取れ野菜が手に入るんです。
パンは、府中のユッカヤさんのものを使用しています。全粒粉の食パンはさくさく、もっちりでおいしいですよ」

 

キッチンとは?

「実験室のような場所。毎回、お菓子を作るうえで少しずつ使用する材料や素材が異なります。たまには失敗もしますが、新しい発見もあり楽しく作っています。作りながら、いつもおやつを食べて下さるお客様の顔が思い浮かぶ場所でもあります」

 

写真 萬田康文
取材・文 高橋紡

 

Writer's Profile
Mihoko Ohtahara

昭和生まれ、東京暮らし。
スペシャルティコーヒー専門店を夫と共に経営。
2000年、長野県でコーヒーとお菓子作りを学ぶ。
2005年、下北沢でスペシャルティコーヒー専門店を始める。
2015年、東府中にてコーヒー豆の焙煎と喫茶のお店「kettle」を開店。


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