特集

vol.5. 私たちに「養生」は出来るの? 〜薬に頼らない漢方とは〜(前篇)

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2018.05.16

「年齢を重ねると、女の人はこころもからだも、いろいろありますよねぇ」。
フォトグラファー・大段まちこと、フリー編集者・井尾淳子、「お年ごろ」を迎える2人が「こころとからだ」を元気にする浄化スポットを訪ねます。

女性誌の特集などでも、よく取り上げられている漢方。「でも、なかなか劇的な改善を実感できなくて」とは、以前から漢方経験が豊富な大段さん。そこで今回の私たちは、「薬を売らない薬剤師」の国際中医師*・藤巻祥乃さんの元を訪ねることに。「漢方というのは、薬や治療がすべてではありません。心と身体の声を聞いて、それを読み解くための知恵なんですよ」という藤巻さんに、お年ごろ女子のための「養生のヒント」を伺いました。


井尾 藤巻さんは『すてらす』という屋号でワークショップの主宰もされていますが、『すてらす』とは、どういう意味ですか?

藤巻 「素を照らす」という意味です。その人がもっている、ありのままの「素」を照らすことで、本来の自分に戻ることを願って、そう名付けました。

井尾 漢方の知恵で、本来の自分を取り戻すことができる、ということですね。

大段 そして、「薬を売らない薬剤師」というのは?

藤巻 漢方は、漢方薬がすべてではないからです。生活の中でできる養生や、心の持ち方を見直すだけで、体はその方本来の力を取り戻すことができるんですよ。

大段 ありのままの「素」を照らすというのは、素敵ですね。

藤巻 ありがとうございます。病気や不調は、本来の「素」の状態ではない心と身体の使い方をしているよ、というサインです。不調の基準も、人それぞれ違うんですよね。

井尾 たしかに、あまり寝てなさそうなのに、いつも元気な人っていますよねぇ。

藤巻 どんな暮らしをしていても、「自分は元気!」と思えれば元気なんです。不調か否かを決めるのはあくまでも自分の身体。なので、みんなが同じ養生をする必要はないんですよ。

井尾 では「養生」って、具体的にはどういうものでしょう? 


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「養生」の定義は、「健康に気を配ること」。漢方的には、「生命を養うこと」。しかし、「わかっちゃいるけど出来ないんです!」。お年ごろ女子のみなさんもそう思いませんか?


深呼吸をするだけでも「養生」

藤巻 たしかに「養生」というと、きちんとした食事や規則正しい生活など、「ていねいな暮らしをすること」と捉えがちですよね。

井尾 仕事やら子育てやらで日々慌ただしいお年ごろ女子は、わかっていてもなかなか「養生」ができないんです。

大段 とくに都心に暮らしていると、自然に触れることも少ないし、物事のスピードも早いし。難しいですよね。

藤巻 よくわかります。でも、少しでも心地良い気持ちになれるものを生活に取り入れるだけでも、十分「養生」なんですよ。

井尾 そうなんですか? 

大段 と、いうと? 

藤巻 もちろんゆっくり休んだり、自然に触れたりすることができれば、それに越したことはありませんが。でも、休みを取ることがムリな時も当然ありますよね。忙しい時は、一日1回の深呼吸でもいい。それも養生の一つです。


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「薬を売らない薬剤師」の藤巻祥乃さん。漢方薬局でのカウンセリングの経験を経て、現在は個人セッション、漢方塾などのワークショップなどを中心に活動中(詳しくはプロフィール参照)。


「血」と「水」は夜、眠っている間に補われる

大段 深呼吸のほかにも、簡単にできる養生はあるんですか?

藤巻 ありますよ。まず夜は、しっかり寝ることです。

井尾 え。めっちゃシンプルですね?

藤巻 当たり前のことですね(笑)。でもそれには理由があって。夜眠ることで、体内では「血」と「水」が補われているんですよ。

大段 「気」「血」「水(津液)」は、漢方の基本ですよね。

藤巻 ですね。「血」は血液と栄養、「水」は血液以外の水分(体液)。「気」は自然治癒力とか、免疫力を含んだ生命力のことです。漢方では、この3つが過不足なくちょうど良い量があってスムーズに巡ること=「健やかな体」と考えています。

井尾 でも夜寝るだけで、「血」も「水」も増えていたとは。

藤巻 夜は「陰陽」で言う「陰」の時間で、「血」と「水」を作り出す時間帯でもあります。夜更かしした翌日、お肌がカサカサになるのは、それがうまく作り出せていないよ、というサインです。

井尾 でも忙しい時は、どうしても早寝は出来ない……。

大段 私も最近忙しくて、睡眠時間3時間の日が続きました……。

藤巻 私の患者さんに、夜勤のある看護師の方が何人かいらして、体質チェックをするとみなさん、血や水が足りていません。でも仕事ですから、生活環境はそう簡単には変えられない。そういう場合は食事で補うなど、他のことでバランスをとることをお伝えしています。

井尾 「今日も早寝早起きできなかったー」と、悲観的にならなくてもいいんですね。

藤巻 そう、完璧主義になる必要はないんですよ。


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寝不足が続く時、藤巻さんのおすすめおやつは「紅なつめと金柑の甘露煮」。なつめは「血」を補い、金柑は「気」の巡りをよくしてくれるそう。「どちらも作り方は簡単。レシピサイトを検索すると、すぐに見つかるのでぜひ作ってみてください」(藤巻さん)


私たちの交感神経は、「行ったり来たり」

藤巻 身体の巡りで肝心なのは「気」。これが不足すると、「血」や「水」が上手く巡らなくなります。

大段 「気」を増やすには、どうすれば?

藤巻 「気」は、食べ物と呼吸で取り込むことができますが、すぐ簡単にできるのが呼吸です。

井尾 身体に不調が出ている時は、「気」が足りていない可能性があるんですね。

藤巻 はい。頭を使いすぎているか、頑張りすぎているか、緊張しているか。

2人 ドキ!

藤巻 そういう時は、交感神経のスイッチがつねにオンになって、呼吸が浅くなったり、胃腸の動きがストップして消化吸収しなくなります。「忙しい!」と思っただけで、交感神経はオンになりますから。

井尾 思っただけで!

藤巻 ええ。自律神経の中の交感神経と副交感神経は行ったり来たりしています。でも私たちの体はシステマティックに出来ていて、「頑張らなきゃ」と思っただけで、交感神経が優位になり、その途端、胃腸の動きを止めたり、血管もきゅっと収縮したりするんです。

大段 なんと。勉強になります。

藤巻 動悸やめまい、のぼせなどは一概に更年期だけとも言えなくて、頭を使いすぎている時にも症状として現れます。現代社会はただでさえ音や光の刺激が強いので、意識してゆるめることをしないと、つねに交感神経に持っていかれてしまうんです。

井尾 たしかに……。

藤巻 なので、意識的に副交感神経に入れ直すには、呼吸を深くすること。でも、胸を開かないと肺が膨らまないので、少し上を向いて、肺が膨らむ感覚を感じながら呼吸をするといいですよ。

大段 そういう深呼吸は、一日どのくらいするといいですか?

藤巻 最低3分くらい続けると、体に「気」が満ちてくるようになります。


漢方とは、「心の筋トレ」だった!

藤巻 忙しい時というのは、先のことを考えているか、過去のことを考えているかのどちらかで、「今ここ」にいない状態ともいえますね。

大段 グラウンディングとか、マインドフルネスとも言いますよね。

藤巻 そうですね。忙しい時はどうしても思考優位になって、体が発するサインに鈍感になってしまうんです。

井尾 そういう時、簡単に「今ここ」の状態に戻す方法はありますか?

藤巻 目をつぶって手を触るとか、自分の体の感覚を味わってみてください。水分が喉を通っていくことを感じながら、ゆっくりお茶や水を飲むだけでもいいですよ。

大段 私は最近メディテーションを始めて、深い呼吸もしているのですが……。慢性的な不調をくり返しているのが悩みです。

藤巻 そうなんですね。だとすると、今は「心の筋トレ」中かもしれませんね。

大段 心の筋トレとは?(笑)

藤巻 たとえば種を撒いても、一定の時間が経たないと芽が出ないように、人間も体の巡りを取り戻すまでには、それなりの時間がかかります。ですからそこであきらめないで、自分の身体を信頼して、もう少し待ってあげてください。

大段 私、せっかちなんです!

井尾 (笑)。そうなんですよね。みんな待てないから、次々と「浄化ジプシー」化しちゃうのかも。

大段 でも、自分の身体を信頼してあげるというのは、大事なポイントですね。

藤巻 その通りです。自分に対して罪悪感をもつと、気の巡りが悪くなるので、じつは身体にはいちばん悪いんですよ。「ちゃんとできない自分」を責めないで、そういう自分も受け入れる。それが「心の筋トレ」です。

大段 それを伺って、気持ちが少しラクになりました。

藤巻 よかった! それに私たちの身体は、仕事のように「投下努力」に対して、すぐに結果が現れるわけではないんですよ。このグラフを見て下さい。


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「不調が劇的に改善し始めるのは、図のように、一定期間のメンテナンスを経てから。努力量に正比例するわけではないんです」(藤巻さん)


大段
 なるほど〜。この劇的に変化する臨界点は、まだ経験したことがないです。

井尾 経験してみたい〜(しみじみ)。

 

次回後半では、漢方的「心の筋トレ」について、さらに深く掘り下げます! お楽しみに!

 

*国際中医師…中国政府の外郭団体「世界中医薬学会連合会」が「中医学の専門家」として認定した国際資格のこと。


▼Profile
大段まちこ
フォトグラファー。かわいいもの、雑貨、ファッションなどをテーマに女性誌やライフスタイル誌で活躍。
井尾淳子
フリー編集者。子育て雑誌の編集経験を経て、現在は書籍、Webコンテンツなどの編集、執筆を中心に活動。

 

Writer's Profile
藤巻 祥乃

薬を売らない薬剤師、国際中医師。大学卒業後、製薬会社で医薬品の臨床開発に携わっている中、自身の卵巣嚢腫や子宮内膜症の治療を通じて中医学と出会う。その素晴らしさや必要性を痛感し、北京中医薬大学日本校に通って国際中医師を取得。著名な漢方薬局で8年間、漢方カウンセリングを行う中で、「薬に頼るだけでなく、日々の養生や心のケアをもっと大切に扱うことを伝えたい」と感じ、2014年から薬を売らない薬剤師として、個人セッションやセミナー講師、漢方塾ワークショップなどの活動を開始。その人自身が持つ本来の「素」を照らすことで、本来の自分に戻り、健康で美しく幸せに暮らすことを多くの人に伝えている。
http://suterasu.com/


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