コーヒーディレクター・焙煎士 山下敦子さんがつくる美味しいコーヒーに出会いました

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2019.04.12

先日、思いがけず素晴らしいコーヒーとの出会いがありました。友人から、「知り合いの女の子のコーヒーなんだけど、一度飲んでみて」とドリップバッグのコーヒーをいただいて飲んでみたんですが、カップを二度見するほどおいしかったんです。

一体どうやってこんなに繊細でやさしいコーヒーを作っているんだろう?と興味が湧いてきまして、彼女のことを調べていると、どうやら中米のコーヒー農園に単身で訪ねていったり、焙煎もすべて自分でやっているとか。ますます興味津々で、ぜひ会ってお話を聞きたい!と思い、そのコーヒーを作っているご本人、カフェオロの山下敦子さんに会いに行ってきました。

 

山下敦子

株式会社カフェオロ代表 コーヒーディレクター、焙煎士

「コーヒーで世界を繋ぐ」をミッションとしてコーヒー豆の販売、セミナーなどをおこなう。

 

岩田:お会いしたら一番に聞いてみたかったことは、中米にお一人で乗り込んで行ったというお話なんですけど(笑)、コーヒーを研究したくて中米へ?

 

山下:こんなにおいしい素敵なコーヒーというものを作ってくれる農家の人に直接お礼を言いたいなと思って中南米へ行きたくてスペイン語を独学で勉強したんですが、前職のコーヒーの会社をやめるタイミングで、行くなら今しかないなと思って行ってきました。ちょうど一年前です。

 

前の会社では、商社を通さずに農園さんから直接豆を買うダイレクトトレードをしていたんですが、その会社とコネクションのある農園へ行かず、せっかくだから自分で一からコネクションを作ろうと調べて連絡を取り始めました。ちゃんと自分でいい農園を探して、つながりを作りたかったんです。時間はかかりましたが、グアテマラ、コスタリカではいい農園をたくさん見つけられました。スペイン語の学校に行きながら農園を訪ねてカフェへ行きという生活を中米で4ヶ月間を過ごしました。次は収穫の時期にぜひまた行きたいと思っています。

 

岩田:山下さんのカフェオロでは、中米で訪ねていった農園の豆を使っているんですか?

 

山下:はい、量的に自分で買って持ってくるのは難しいので、行った農園の豆を扱っている商社を日本で見つけて、買っています。

 

岩田:豆を選ぶ基準っていうのはありますか?

 

山下:最初はサンプルを取り寄せて、焙煎・カッピングして味を確認しています。例えば、ずっとうちで出してみたい農園さんがあるんですが、実際カッピングしてみたら今年はあまり出来が良くなかったということもありますので。自分の中のクオリティとしてはこれは出せないかなと思うと買わないです。すごく良くて、この味をみなさんに飲んで欲しい!と思ったら取り扱います。

 

 

岩田:この豆はこの焙煎でというのはどう決めるんですか?農園さんから指示があるとか、この豆はこの焙煎でみたいな焙煎界のルールがあったりするんですか?

 

山下:自分で焙煎して決めます。まず最初にサンプルでちょっと浅いくらいで焙煎するんです。それでカッピングして、このポテンシャルなら浅煎りがいいなとか、もうちょっと深い方がいいなとか、酸味の出方、ボディの強さ、バランスをみて自分の中で落とし込んで決めていきます。

 

岩田:焼く人の好みっていうのはやっぱり出てくるものですか?

 

山下:カフェをやっている人が好みのコーヒーを出すというのはよくあることなんですが、味を鑑定する人、カッピングする人は自分の好みを入れてはいけないんです。素材をいかに評価するかというのが仕事なので、そこを評価して素材に適切な焙煎をする。カッピングで「この生産者はどういうコーヒーを作りたかったのか」というのがわかってくるので、それで方向性を決めていきます。コーヒーには二段階の作り手がいて、最初の作り手は農家の方。そして二番目の作り手は焙煎する人。生産者がどういうコーヒーを作りたかったのかというのを作り出すというのが焙煎士の仕事だと思います。

 

岩田:はるばる農家さん・焙煎士さんの連携プレーで我が家までやってきたのに、淹れる私がその味を殺す!みたいな惨事にならないように、美味しく焙煎された豆の良さを最大限に生かすお家での淹れ方のコツがあれば、教えていただけますか?

山下:しっかり豆の量を計ると味はかなり変わります。メジャースプーンで計ると豆によってかさが違うのでばらつきがでます。良い物でなくてもいいですし、料理にも使えるので計量器があると味が良くなりますよ。

あとはお湯の温度です。高すぎるとキツイ味になるし、低温だと成分が出切らないので、優しいんですが軽すぎる味になります。88~91度の温度がいいですね。ドリップの淹れ方の速度も大事です。いいコーヒーは早く落とした方がいいです。良いコーヒーは香りも高く豊かな甘みを持っています。 余計な苦味を出さないように、あまりゆっくり時間をかけすぎない方が良いです。コーヒーは最初に一番いいエキスが出るので、一番最初にどう抽出するかが大切です。あとはいいコーヒー豆を選ぶことです。

 

岩田:コーヒー屋さんで、どうやっていいコーヒーって選んだらいいんでしょう?

 

ちゃんと豆の情報を教えてくれる店員さんがいると、信頼度に繋がると思います。質問するとしっかり答えてくれるところ。例えば、焙煎は何月何日で、これはアフリカのどこどこで取れたコーヒーなんですよって教えてくれるということは、その人もしっかり豆の勉強をしてるということがわかります。こういう飲み方してくださいね、っていうアドバイスを受けると、その人の情熱が伝わりますし、そういう人から買いたいですよね。


(実際に焙煎しながら、焙煎のお話を聞かせてくれました)

 

あとは焙煎日ですね。焙煎してから2週間とか経っている豆を買うと、そこから自分の家で飲むことになると、かなり時間が経ってしまうので鮮度が落ちてしまいますね。できれば1週間以内のコーヒーを買った方がいいです。粉にしてしまうと酸化が早くなってしまうので、安いものでもいいのでグラインダーを買った方がいいですね。挽いている時が一番香り高いので。

豆の見た目も大事です。見た目が綺麗というのはやっぱり大事です。欠けている豆はよくないですね。生豆で見るとよくわかるんですが、虫食いというのもあります。カビている豆や虫食いの豆をそのまま焙煎してしまうと、全体の味と香りに影響が出てきます。私は焙煎をする前に、しっかり一粒一粒目で見て悪い豆をよけて、良い豆だけを焙煎に回します。焼いた後ももう一度目で見てハンドソーティングをします。


(こちらが焙煎に回せない豆の例。割れていたり、虫が食べた小さな穴が見えます。山下さんはこれを見逃さないように一粒一粒丁寧にソーティングしていました)

 


(焙煎後のもう一度一粒ずつ確認。緻密な作業こそが山下さんのおいしいコーヒーの秘密のひとつなんだと思いました)

 

岩田:焙煎した豆を買って、家で保存しておくのに一番いい方法はなんでしょう?

 

山下:基本的に豆にかわいそうなことをしたくないので、冷凍庫はおすすめしません。コーヒーを淹れる際に、冷凍の極限状態から常温に戻すのは気温差がありすぎて豆にストレスなんです。遮光性がありバリア性の高い保存容器や保存袋にちゃんと入れている場合は、夏場以外は常温でも大丈夫です。ただし、高温多湿や直射日光が当たる場所はどんな季節でもNGです。その場合や夏場は、冷蔵庫の野菜室をおすすめします。ワインセラーを持っている場合はワインセラーがいいですね。酸素、光、水分にいかに触れさせないかが重要です。

 

岩田:そのコーヒーを美味しくいただく際に一緒に食べるデザートのペアリングってどうするのがオススメですか?

 

山下:簡単にいうと、同じ系統のものは合います。しっかりめの苦めのコーヒーにはビターチョコレートが合います。軽いタイプならビスケットとか和菓子に合いますし、酸味が強いものだとレモンパイとかベリー系統のデザートに合います。最初にコーヒーを飲んでみてから選べるなら、コーヒーがチョコレートっぽいと思ったらチョコレートをとか、ナッツっぽい風味があったらナッツを選ぶとマッチします。

 

岩田:今日は山下さんのコーヒー豆を愛でる姿勢を見せていただいて、だからこんなにおいしいコーヒーができるんだって納得しました。コーヒーは作り手の連携プレーで私たち飲む人のカップまで辿り着いているんだなと思いました。やっぱり最初の作り手の農家さんを知るというのは大事なんですね。

 

山下:そうですね。私が実際に農園に行くのは、自分で感じたことを伝えられるからです。自分が今コーヒーを日本で売る時の指標にしています。コーヒー豆の情報を提示して満足するのではなく、こういう国でこういう文化でこういう伝統や芸術などがあるよということも一緒に伝えていけたらいいなと思っています。

 

コーヒーってカップに入ると液体になってしまうんですが、カップからいろんな糸が出ているおもしろい飲み物だと思っています。私はその糸を繋げる役目をしたいといつも思っています。コーヒーはやっぱり嗜好品なので、濃いのが好きとか酸味が好きとか、結局は好みなんです。私の仕事は、良いコーヒーと悪いコーヒーをちゃんと選別して、コーヒーはジューシーで甘みもあるもので、もともと苦いものではないという本当のコーヒーの味を少しずつ広めていくことだと思っています。そしてそのコーヒーはどんな国で作られていて、どんな冒険をして、どんな人がどんな思いを込めて作ってきたのかというのを伝えられたらいいなと思います。

 

わたしがあまりの美味しさにカップを二度見した、山下さんのコーヒーはカフェオロのサイトから購入可能です。皆さんも是非、一度飲んでみてください。コーヒーってこんなにスッキリしていて甘くて優しい味なんだって感じるはずです。

 

Writer's Profile
岩田リョウコ

‪ライター、コラムニスト、イラストレーター。コロラド大学大学院で日本語教育学を学び、2009年から外務省専門調査員としてシアトル日本国総領事館勤務。コーヒーのトリビアをイラストで紹介する『I Love Coffee』は月間訪問者数60万人のサイトに成長しアメリカで書籍化される。著書に『シアトル発ちょっとブラックなコーヒーの教科書』など。サウナ好きが高じてサウナ・スパ健康アドバイザー資格を取得。‬


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