南風食堂さんによる、新しい乾物の世界。(前編)

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2018.10.05

「おいしい」と思うとき、そこにはきっと理由がある、はず。
食べる人のことを思った体にうれしい料理、作り手の信念を感じる料理や素材、心も温まるストーリーのある料理……。
そんな「おいしい」の正体を探して、食に思いを込めているお店や料理家さん、食のスペシャリストを訪ねて回ります。


今回取り上げるのは、乾物。乾物というと地味な印象を受けるかもしれませんが、そんなイメージを払拭してくれるのが、小岩里佳さんと三原寛子さんによる人気料理ユニット「南風食堂(なんぷうしょくどう」です。
南風食堂は、1999年に結成。さまざまなレシピ本を出されていますが、なかでも乾物料理がテーマの『乾物の本』(スペースシャワーブックス刊)は、レシピ本好きの私をノックアウト。

「乾物ってこんな使い方があるんだ!」と驚くレシピの数々。そして乾物が主役とは思えない、鮮やかな彩り。そんな料理を美しく切り取った写真が並ぶ、まるで写真集のようなレシピ本でした。そして、第一章が自家製乾物を使うレシピというなんとも画期的な構成にも、乾物への強いこだわりを感じたのです。

そんな乾物への愛情をひも解くべく、三原さんのご自宅までおジャマしました。


編集者から料理家へ。きっかけはキューバ料理

小岩さんが育休中のため、今回お話をお聞きしたのは三原さん。
数々の雑誌にレシピを提供するなど、売れっ子の南風食堂ですが、どのような経緯で結成されたのでしょうか。


 お手製の乾物は、どれも素材の味が濃厚。右上から時計まわりに、ビーツ、マイタケ、オクラ、梅シロップを漬けたときの梅、ズッキーニ、ニンジン、ラディッシュ。


こちらは、ディル、ニンジンの葉、イタリアンパセリを干したもの。


やさしい陽の光が差し込む三原さん宅のキッチン。穏やかな雰囲気で調理されているのに、あっという間に美しく料理が仕上がるのに驚かされました。


「私は元々、写真集やアートブックを作る編集の会社で働いていたのですが、その会社が“ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ”というキューバの音楽家のドキュメンタリー映画の公開に合わせ、出演している音楽家の方々のインタビューと写真の書籍の編集を請け負い、出版記念パーティーを開くことになりました。パーティーでキューバ料理を提供することになったのですが、もともと食いしん坊で料理好きだったことから、ケータリング担当に指名されたんです」。

キューバ料理についてなんの知識もなかった三原さんは、キューバ大使館に問い合わせるなどして、試行錯誤でキューバ料理を作ります。その甲斐あって、来場した人の中から、ケータリングの依頼を受けることになったそう。そこで、一緒にやろうと誘ったのが、大学の同級生だった小岩さんでした。ともに大学で写真を学び、友人らと集まって課題を制作するときは、いつも一緒にご飯係をやっていたという間柄。

お互い本業が別にあったため、部活のような感じでケータリングの仕事をこなすうち、依頼が増え続けたため、8年に及ぶ“二足わらじ期間”を経て料理ユニットとして独立し、今に至ります。


自家製乾物って実はこんなに簡単!

ケータリングでは食材が余ることが多く、保存のために当たり前のように食材を干して乾物にしていたという南風食堂のお二人。でも、自家製って手間がかかるのではないでしょうか。
「食材を切って日当たりのいい場所に置いておくだけなので、すごく手軽ですよ。半日ごとにひっくり返すぐらいで、基本は置いておくだけ」というお返事が。


乾物作りで使っている、網付きザル(左)と盆ザル(右)。網付きザルは、網でふたをすると猫や虫対策になります。


野菜を細切りにするときに重宝するのがしりしりですが、これはなんとピンク色! 沖縄で買われたものだそうで、「色が派手で、すぐに見つかるから愛用しています(笑)」と三原さん。


三原さんおすすめの乾物。体の冷え予防にもなる糸寒天は、スープのとろみづけになり、棒寒天と違って戻さずに使えて便利。塩昆布は、キャベツの葉ともむだけで一品に。切干大根は、歯ごたえがあって太陽の甘さをより感じる太切りタイプが好みなんだそう。


「作り方ですが、ザルの上に細切りまたは薄く切った食材を並べ、ベランダや室内なら日当たりのいい窓際に置いておきます。半日ごとにひっくり返して両面が乾いたら完成。食材の水分が多い場合は、ザルと食材の間にクッキングシートをしくと、くっつくのを防止できます。途中で雨が降ったら、残りはオーブンで焼けば大丈夫です」。


自家製なら、乾物の魅力がさらに広がる

「長期保存させたいときはカラッカラになるまで干しますが、セミドライだと食感が残ってまた別のおいしさが。そんな加減ができるのが、自家製乾物の魅力です。セミドライの加減は、触った感触で確かめて。水分が多くて傷みやすいので、その日か翌日までに食べきってください。また、どのくらいの太さや厚さにするかや繊維に対する角度を、使う料理に合わせて自分で調整できるのも、自家製のいいところです」。

細切りにすれば水で戻さなくても、煮物やスープ、味噌汁なんかにそのままポンと入れられて、とても重宝しているのだとか。ニンジンや大根、ズッキーニなどが向いていて、細切りのほうが乾燥にかかる時間も短くてすむそうです。

想像していたより自家製乾物づくりって簡単。しかも便利に使えて、料理の幅もアップしそうと、俄然やる気が出てきました。


さて、後編では、『乾物の本』に掲載のレシピ2点をご紹介。
食材の取り合わせの妙と調味料使いの巧みさを感じる、何度も作りたくなるレシピですので、ぜひお楽しみに♪

 

小岩里佳と三原寛子による料理ユニット。
食に関する企画提案や編集物の制作、アートプロジェクトでの作品制作展示、雑誌やWEBなどの料理紹介、商品開発や店舗のフードディレクションなどを行う。
また、新木場のカフェ「CASICA(カシカ)」にて、フード監修を担当。アーユルヴェーダの料理教室も開催している。

URL:www.nanpushokudo.com/
www.facebook.com/nanpushokudo/

 

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