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vol.3 チーズの種類言えないと恥ずかしい!? 学芸大学のチーズ専門店に教わるチーズの話とおいしい食べ方

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2018.12.07

「おいしい」と思うとき、そこにはきっと理由がある、はず。
食べる人のことを思った体にうれしい料理、作り手の信念を感じる料理や素材、心も温まるストーリーのある料理……。
そんな「おいしい」の正体を探して、食に思いを込めているお店や料理家さん、食のスペシャリストを訪ねて回ります。

学芸大学のチーズ専門店「ユーロアール」オーナーの鈴木さんから教えていただく、ナチュラルチーズの話は、今回で最終回。鈴木さんのチーズにまつわるご経歴やチーズの魅力をたっぷりとお届けしますよ。


本当のチーズのおいしさを伝えたいという想い

もともとは食品関係の会社に勤めていたという鈴木さん。野菜や果物、酒類、乾物などさまざまな食品を経て、乳製品の担当を任されることになりました。これまでの食品となにかしら共通点があるだろうと思っていたのに、チーズはどの食品ともまったく扱いが異なる“別物”。

「最初は途方に暮れたんですが、やっているうちにどんどん面白くなったんですよね。会社の先輩に聞いては作業していたのですが、こっちの質問のレベルが上がるにつれて、先輩たちが答えてくれなくなって(笑)。そこで休みの日にチーズ教室に通って勉強し、シュヴァリエ(フランスチーズ鑑評騎士の会が授与する民間称号)に叙任されるまでになっていました」

ユーロアールの人気商品「ラングル・オー・コアントロー」。ラングルチーズをオレンジリキュールのコアントローで洗い込んだウォッシュ系で、シャンパーニュとの相性抜群です。


期間限定(10月~翌3月)で販売される「特熟モンドール」も人気の品。そのまま食べるほかに、温めてパンやサラミ、ゆでたジャガイモやブロッコリーなどにからめて食べても美味。


鈴木さんが作るオリジナルチーズの数々も人気。こちらは、数種類のフレッシュ系チーズと自家製コンポートを合わせたもので、「ミモザ」はアンズ、「ブランシュ」はイチヂク、「ブエノスアイレスの夜」はブドウのコンポート入り。

鈴木さんがチーズにのめり込んでいった当時は、フランスからチーズが輸入され始めた頃。でも、ほとんどの店が賞味期限だけを頼りに販売しているような状態だったといいます。食べ頃なのに賞味期限が近いからといって廃棄されたり、半値で売られていたりなんてことも。

それではチーズの本当のおいしさが消費者に伝わらないと考えた鈴木さんは、「本場フランスでメンテナンスや追加熟成の方法を自分の目でみて確かめて、日本でも同じようなやり方で販売したい」という思いをつのらせます。そして、38歳のときに会社を辞め、単身フランスへと旅立ちました。


熱意が通じて道が開けたフランス時代

「訪ねるあても、紹介状もない。気がついたらシャルル・ド・ゴール空港に立っていたという感じでした。まわりから見たら謎の東洋人」と鈴木さんは笑います。

そこで鈴木さんは、1軒1軒チーズ生産者をたずねることに。スタージュといって賃金をともなわない研修制度がフランスにはあり、スタジエ(研修生)として働かせてほしいとお願いして回ったのです。外国人の受け入れは難しいと次々と断られますが、たった1軒だけ、鈴木さんを受け入れてくれたファミリーがいました。

フランス時代には中古の車を手に入れてフランス中をまわり、チーズの産地を見て歩き見聞を深めたそう。


店名の「ユーロアール(Euro Art)」は、「ヨーロッパの芸術」という意味。チーズは芸術品に相当するという想いが込められています。


7割以上がフランス産チーズ。フランスでは産地によって牛の種類も水も牧草も製法もすべて異なり、チーズの表情が豊かなのだとか。


鈴木さんはチーズ工場で働いた後、ファミリーが経営する直営店での販売にも携わります。
「朝は地下のカーヴでチーズのメンテナンス作業、昼頃からお店を手伝ったり、配達に行くといった毎日です。メンテナンスや追加熟成の方法は、売り場のおばちゃんの大先輩が、“こうすんだよ”って教えてくれるのを見て覚えました」

チーズに関する語彙の豊富さはまわりのフランス人の誰にも負けなかったといいます。いつも胸ポケットにミニフランス語辞典を入れ、知らない単語に出会うとすぐさま調べるから、辞典はぼろぼろに。仕事の合間をぬってブルゴーニュ大学に語学の勉強に通います。そんなチーズと語学に没頭する日々はあっという間に過ぎていきました。

「スタージュは3か月の期限つき。だから次の受け入れ先を探さなくちゃと思っていたら、社長から“採用したいけど働く気はあるか”と聞かれたんです」

もちろん返事はウィ。
「外国人を採用するとは思い切った決断ですよね」と鈴木さんに言うと、「使い勝手のいい奴と思われたんじゃないの(笑)」と茶化しますが、社長に直接聞くまでもなく、鈴木さんの熱意と豊富な知識が買われたに違いありません。


貴重なワインや雑貨がセンスよく並ぶ、落ち着いた雰囲気の店内。


パリの一角を思わせるおしゃれな外観。近所の人や都内に住むチーズ好き、食のプロで賑わいます。


3年に及ぶフランス生活を経て帰国した鈴木さんは、都内でチーズ専門店を開きます。鈴木さんの細やかな配慮が行き届いたチーズは、本場のチーズ専門店と肩を並べる極上の味わい。食のプロからも信頼される人気店となりました。

そんな鈴木さんに改めてチーズの魅力をたずねてみました。
「熟成度合いや届いたときのコンディションにしてもそうだし、命あるもののひとつの宿命というか、同じものが二つとしてないところですね。インダストリアルなものと違って、前例で処理できないものが99.9%。それとチーズには寿命があって、長くても3か月が限界。その生涯を見通すことができるのも面白い部分です」

チーズの世界は「やればやるほどわからないことが出てくる。追えば逃げるもの」とも話す鈴木さん。これからも日々手探りしながら、チーズ道を邁進していくことでしょう。

取材時には、大学生風の男性のお客さんの姿も。「バッグに入れて持ち運んで時々取り出して食べたいのだけど、どんなチーズがいいですか?」という質問に、懇切丁寧に提案していた姿が印象に残りました。

チーズは詳しくないからと尻込みせず、少しハマりかけたのなら気負わずお店に足を運んでみてくださいね。

 

vol.1 チーズの種類言えないと恥ずかしい!? 学芸大学のチーズ専門店に教わるチーズの話とおいしい食べ方はこちら

vol.2 チーズの種類言えないと恥ずかしい!? 学芸大学のチーズ専門店に教わるチーズの話とおいしい食べ方はこちら

 

ユーロアール
住所:東京都目黒区中央町2-35-17
最寄り駅:学芸大学駅より徒歩6分
電話番号:03-5768-2610
営業時間:11:15~19:00
休日:月曜 ※祝祭日の場合は営業。繁忙期は変更あり
URL:https://www.euro-art2001.com/

 

撮影 古家佑実
取材・文 諸根文奈

 


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