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最近気になる鎌倉のパン屋さん① 3つの出会いが生んだ“絶品酵母パン”に会いに(前編)

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2018.12.21

「おいしい」と思うとき、そこにはきっと理由がある、はず。
食べる人のことを思った体にうれしい料理、作り手の信念を感じる料理や素材、心も温まるストーリーのある料理……。
そんな「おいしい」の正体を探して、食に思いを込めているお店や料理家さん、食のスペシャリストを訪ねて回ります。

観光名所の鎌倉は、おいしいパン屋さんが肩を並べるパンの激戦区でもあります。今回はそんな鎌倉のパン屋さんをご案内。

まず始めにご紹介するのは、歴史的な寺院が集まる北鎌倉にある「にちりん製パン」。
2015年のオープンながら、自家製の天然酵母を使い、長時間発酵させることで生まれる滋味深いパンは、すでに多くのパン好きを夢中にさせています。


ひきたての石臼びき粉を使った、風味満点のパン

 北鎌倉は鎌倉駅から一駅の北鎌倉駅周辺のエリア。有名寺院が立ち並ぶ落ち着いた街並みには、古民家を改装した飲食店やアンティークショップなどが立ち並び、観光客がそぞろ歩く姿が多く見られます。

そんな観光客に混ざって歩いていると、なんともいいパンの香りが。道行く人もみな足をとめているのが、今回の目的地「にちりん製パン」です。


レトロモダンな店構え。木製のガラス引き戸をがらりと開けると、わずか一坪ほどのスペースにパンが並ぶ、小さなパン屋さんです。


古い木箱やザルに並べられた天然酵母のパンは、どれも見るからにおいしそう!


すっかり店の顔となった動物パン。「はりねずみ」(左)はホワイトチョコとクルミ、「ねこ」(右)はミルクチョコとマカダミアナッツをそれぞれ包んでいます。

 

店に入ると出迎えてくれたのは、一見しただけで「とても息のあった仲のいいご夫婦なんだろうな」と思わせる津野(つの)さんご夫妻。ダンナさまの大吾郎(だいごろう)さんがパン作りを、奥さまのこずえさんが販売を担当しています。

穏やかな印象の大吾郎さんですが、研究熱心でパン作りへのこだわりは相当なもの。扱いが難しいとされる国産小麦粉だけを使用し、自家で育てた天然酵母のみを使って焼き上げます。

「イーストが嫌いなわけじゃないけど、シンプルにできるならそのほうがいいと思って。うちでは、レーズンから起こしたレーズン酵母とルヴァン(小麦で作る発酵種)の2種類を使用し、パンによって使い分けています」

また、どのパンにも必ず入れているという湘南小麦の全粒粉は、石臼を使い工房で自家製粉。ひきたての粉を使って焼くと、風味豊かなパンに仕上がるのだそう。

さらに、パンの発酵時間もたっぷりと。レーズン酵母で作るパンは一次発酵に18~24時間ほどもかけ(オープン当初は4時間だったのがどんどん長くなっていったそう!)、ルヴァン種のほうも前日に粉と水を混ぜて生地を長時間寝かせるなどして、粉の風味を最大限に引き出す工夫をしています。


ほっこりかわいらしい雰囲気の津野さん夫妻。お二人の持つ和やかな空気感が漂う、居心地のいい空間です。


「ハートのチョコフランス」(左)は、フランスパンの生地でビターチョコを包んだもの。「ビターチョコフランス」(右)もビターチョコ入りで、ピンクペッパーのトッピングがキュート。


早速いただいてみると、「パンが生きている!」そんな言葉がぽんと頭の中に浮かびます。粉の旨味が口いっぱいに広がり、かみしめる度に味わいが増していくよう。野菜や果物にも似た生命力、そんなものを感じさせてくれる唯一無二のパンでした。


進路を変えたとき後押ししてくれたパンとの出会い

そんな極上のパンを生む大吾郎さんですが、もともとパン屋さんになることを夢見ていたわけではありません。

「イラストレーターになろうと考えて、絵の学校に通っていたんです。今の奥さんとはその学校で知り合いました。だけど、卒業が間近に迫ったときに絵を仕事にするのはやめようと思い立って。何か手に職をつけたいと考えたんです」

進路に悩んでいたそんな頃、こずえさんとデートで東京・浅草にあるパン屋「パンのペリカン」に行った大吾郎さん。あまりのおいしさに衝撃を受け、さっそく自宅でパン作りにチャレンジしてみます。「難しかったけど、とても面白くて」と、パンの道に進むことを決意しました。

都内の有名店「メゾンカイザー」で数年働き、フランスの伝統的な製法を着々と身に着けます。そんな折、すでに結婚して夫婦となっていたこずえさんと引っ越すことになり、「鎌倉、いいかもね」と半ばノリで、知り合いもいない土地に二人で移り住みました。その後、縁があって新たな勤務先となったのが、鎌倉屈指の人気店「KIBIYAベーカリー(キビヤベーカリー)」。


パンの成形やクープ(切れ目)を入れる作業。とても素早い手の動きに魅了されます。


パン作りはいちからすべて大吾郎さんおひとりで。ひとつ一つのパンに愛情を込めて焼き上げます。

 

自家製粉の粉を使い、自家製の天然酵母で焼き上げる「KIBIYAベーカリー」の製法に、とても衝撃を受けた大吾郎さんは、すでに独立願望もあり、少しでも多くのことを吸収しようと日夜パン作りに励みました。

「キビヤさんの影響が大きい」という食パン。砂糖やバターなどの油脂類を一切加えないから、小麦の力強い風味が楽しめます。


物件との出会いで、独立開業がトントン拍子に

独立への強い思いはありつつも、店のイメージを具体的に持てずにモヤモヤしていた大吾郎さん。なかなか実現のめどがたちませんでした。

「開業資金を借りるため、地元の商工会議所に相談に行き事業計画書を書いてみたのですが、すべてが漠然としていて。“もうちょっと煮詰めてから動いたほうがいいですよ”と言われる始末で」

そうして開業の話は、しばらく放置していたそう。ところが、こずえさんと北鎌倉をふらり散歩していたときに、魅力的な物件に出会います。貸店舗と書かれたふだが立てかけてあり、中をこっそり覗くと、こぢんまりとしたスペースながら雰囲気ある佇まい。理想とするパン屋のイメージがどんどんと膨らむ場所でした。

すぐに物件を仮押さえすると、開業に向けて急展開します。イメージが具体的にかたまったことで、商工会議所の担当者からすぐにゴーサインがもらえ、資金の借り入れも無事に完了。ほどなくして店をオープンさせることができました。


店先から覗き込むと、おいしそうな焼き色のついたパンが。


内装はご近所の設計事務所が担当。大吾郎さんのやりたいことに共感し、「できるだけのことをしたい」と協力してくれました。


後編では、とある農家さんとの運命的な出会いで生まれたライ麦パンにまつわる秘話や、にちりん製パンのこだわりパンをまだまだご紹介します。ぜひお楽しみに!

 

にちりん製パン
住所:神奈川県鎌倉市山ノ内1388
最寄り駅:JR横須賀線北鎌倉駅より徒歩4分
電話番号:0467-67-3187
営業時間:10:30~17:00
休日:木・金曜
URL:http://r.goope.jp/nichirinseipan
   https://nichirinseipan.shop-pro.jp/(ネットショップ)

 

撮影 古家佑実
取材・文 諸根文奈

 


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