【リレー連載vol.25・藤木宏美さん】野菜通とワイン通。食いしん坊夫婦が住むところ

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2018.11.16

良き毎日を過ごしている人は、食べることを大切にしている。キッチンにも、その人らしさがあふれている。そんなgoodな風景が広がる、キッチンをリレー式でお届けします。

 

 

20人の来客でも問題なし。人が集まりたくなるキッチン

 24回目に登場したお米農家・山崎瑞弥さんがリレーバトンをつないでくれた先は、茨城県つくばで「ポム・ド・テール」を主宰する藤木宏美さん。
「ポム・ド・テールは、私が個人でやっている八百屋です。自然栽培で農薬や肥料、動物性堆肥を使わずに育てられたおいしい青果を中心に、レストランや個人宅に宅配しているんです」。
 暮らすのは、のんびりとした雰囲気漂う田園風景でひときわ目立つ、水色の外観の戸建て。家の近くに、野菜を発送する作業場を借りています。
 野菜を生業とする藤木さんと、ワインのインポーターに勤務する夫。そろっておいしいもの好きの夫婦が家を建てたのは3年前。いちばんのリクエストは「人が集まるキッチンがほしい」でした。
 設計を依頼したのは益子の「星居社」の高田英明さん。藤木さんいわく「美意識の塊のような大工さん」。では、どんな住まいなんでしょうか。


ミモザの木が大きく枝を張り、自転車のかごに「FUJIKI」と表札が。


ドアを開けておじゃまします。玄関スペースも段差もなく、いきなりダイニングキッチン。まるで広い土間のよう。「そうなんです。来客が多いので、土間のようにしたかった。土足でもいいくらい(笑)」。藤木さんの野菜を仕入れるレストランのシェフや、夫の仕事でつながったワイン好きが20人以上やってきて、料理とワインを囲んでスタンディングバー状態のこともしばしば。


カウンターに栗、柱などに京都、益子など国産の木材を使ったセミオープンキッチン。木のやさしい質感はそのままに、直線を大事にしたシャープで洗練されたデザインは、「星居社」らしいセンスのよさ。ダイニング側から見ると、まるでレストランのよう。


食器棚をあけて器を探す藤木さん。その後ろがパントリーになっています。突き当たりのグリーンのドアがトイレ。トイレの左手がバスルーム。キッチン、パントリー、トイレ、バスルームとつながる動線は、効率がよく家事もスムーズに。


生産者、顧客とのやり取りは、主にパソコンで。座らないようにあえて高い位置にデスクを作ってもらって、事務作業は立ってさくさくと。


キッチンの裏はこんな感じ。すべてを木にしてしまうとナチュラルすぎると、キッチン本体は業務用のオールステンレス。コスト、メンテナンスのしやすさ、シンプルなデザインと3拍子そろっています。作業台もあえてのオープンに。ワイン箱、かごなどを使って調味料や食材を収納。


ガスコンロは、火力が強いリンナイの3口ガステーブル。無骨な雰囲気のステンレス製を探し、業務用を導入。


存在感が出がちな換気扇は、ステンレス製カバーを造作してもらいシンプルに。ふちにひょいっとレードルやフライパンをかけられて便利。


シンク脇には、タオルバーとS字フックを利用してゴミ袋を吊るしています。まねしたいアイデア!

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植物に囲まれて暮らす

 周囲に住宅が少なく、借景は広々とした田んぼ。自宅の敷地には塀は築かず、開放感を大切にしました。いつかサンルームを作りたいという庭も、草が生命力いっぱいに育っています。下校中の小学生に「草、枯れよー!」と大声でいわれ、たまたま家にいたご主人が「すんませ〜ん」(関西弁アクセントで)と返したという大らかなエピソードに笑ってしまいました。

キッチンに立つと見える風景。自宅の庭の向こうには、稲が揺れる。「秋なんて黄金色に輝いて、夕方は最高。夜は遠くに走る車のライトもきれいなんです」。


室内に飾る植物は、自宅の庭に生えているもの。ミモザの葉としその花をわさっとワイルドに。

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いいグラスはワインだけでなくクラフトビールにも

 キッチンにはワイングラスがずらり。スパークリング、白、赤ワインの種類やぶどうの品種によっておいしく飲めるグラスの形状が変わるけれど、ワインを飲みにくる来客が多いから(20人以上くる事も!)、いろいろグラスはそろえずに、ラディコングラスで統一しています。酔っぱらってうっかり割ってしまわないように、グラスだけは翌朝洗うと夫婦で決めているとか。

愛用のラディコングラスは、イタリアの有名ワイン生産者であるラディコンさんが自身のワインのためにオーダーメイドしたグラス。「このグラスのいいところは、スパークリングから白、赤とワインのタイプを選ばずに、それぞれのワインの個性をしっかりと感じさせてくれるところ。特に、自然派ワインとは相性がいいように感じます」。そして、グラスのボウルが適度な深さで、洗いやすいのも好きなところとか。


特に大切にしているグラスが、オーストリアの老舗メーカー、ロブマイヤーのバレリーナシリーズ。手ふきならではの薄さ、大きめのボウルから口がすぼまった形は、ワインの複雑な香りをよりわかりやすく引き立ててくれる。「赤ワインだけでなく、クラフトビールもおいしく飲めますよ」。


「ワイン、開けましょう!」と別室にある大きなワインセラーに向かう藤木さん。今日の食事に合う、と何十本ものストックのなかから選んでくれた白ワインは、フランス・ロワールの生産者、アレクサンドル バンのもの。大きくAと描かれたエチケットは、自然派ワイン好きの間ではおなじみ。

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いつものごはん

 藤木家の夕食は、毎日野菜たっぷり。業務用の大きな冷蔵庫の中には、取引のある生産者から送られた野菜が何種類も。「どういうふうに料理したらおいしいのか、日がたったらどれくらい味が変わるのか、自分が知らないとお客様に伝えられない。焼いたり、煮たり、揚げたり、いろんな食べ方を試作しているんです」。ナスを種類別に焼き比べたり、日向夏とクレソンのカルパッチョやからし菜と次郎柿のサラダなどおもしろいけど抜群に合う組み合わせを考えたり。試食の様子やレシピのヒントは、インスタグラムでも見られます。

「ししとうと万願寺唐辛子があるから焼きましょうか」。網に乗せて、じっくり弱火で少し焦げるまで火を通すのがコツ。みょうがとごま油、しょうゆで和えていただきます。


茹でた金時草には、自家製梅酢とたっぷりのかつおぶしでさっぱりと。


野菜がたくさん食べられて満足度が高い、というエスカベッシュ。いわゆる、南蛮漬け。ワインビネガーを使っているから、ワインと合う♥

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「野菜のためのエスカベッシュ」

小アジやワカサギなど好みの小魚 1パック
塩               少々(小魚に振る用)
玉ねぎ             1個
カラーピーマン(赤・黃)    1個ずつ
にんじん            1本
セロリ             1本
唐辛子             1本
揚げ油             適量
米粉              適量

<合わせ調味料>
ワインビネガー 大さじ4
オリーブオイル 大さじ4
塩       小さじ1
コショウ    少々

  1. 魚を洗い塩をまぶしておく
  2. 合わせ調味料を沸かして塩を溶かしておく
  3. 野菜を全て千切りにしてボールにまとめ2の合わせ調味料を注いでおく
  4. 油を熱して1の魚の水分をキッチンペーパーで取り米粉をはたいて揚げる
  5. 3のボールに揚がった魚を順次入れていく
  6. そのまま30分ほど漬け込む

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愛用の道具

「愛用の道具ですか~、なんだろうな~」とかなり悩んで選んでくれたのが、この3つ。自宅で大勢で料理をする機会が多いため、道具に関しては食器洗浄機にいれられるような丈夫なもの、衛生的なステンレス製のものが多いよう。

お母様から譲ってもらった鍋。うっかり、ガラスのふたにヒビが入ってしまいショックを受けているところ。


笠間で作陶している船串篤司さんの器が好き。ほかにも数枚持っていて、さりげないリムのデザインや素朴な質感に、料理が映える。


料理を取り分けるには、取り箸よりもトングがいい。厨房用品を扱う「オリトモ」で買ったもの。

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藤木宏美さん

自然栽培で育てられた青果を中心に卸販売、個人宅配をする「ポム・ド・テール」主宰。
美大のデザイン学科に通っていた20歳の時に環境問題を課題に出され、パーマカルチャーと出合い、興味を持つ。卒業後、広告代理店を経て、株式会社ナチュラル・ハーモニーへ転職。店舗の店長や宅配の部署を経て独立。素晴らしい野菜を作る生産者とつながり、その野菜をより多くの食卓に届けることを使命と考え、宅配だけでなくイベントや執筆など日々活動中。自然派ワインのインポーターに勤務する夫と2人暮らし。

 

キッチンデータ/持ち家木造2階建て 茨城県

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取材・文/柳澤智子
写真/萬田康文

 


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