【リレー連載vol.26・高山純子さん】場所も向きも自由自在? プレハブ住宅セルフビルドで造るキッチン

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
2018.12.14

良き毎日を過ごしている人は、食べることを大切にしている。キッチンにも、その人らしさがあふれている。そんなgoodな風景が広がる、キッチンをリレー式でお届けします。

 

 

プレハブだからできる、柱のない自由な空間

 益子町で暮らす高山純子さんのキッチンには、藤木宏美さんがつないでくれました。藤木さんが新居を建てたとき、玄関扉やダイニングテーブル、椅子を作ってもらったのが純子さんの夫で木工作家である英樹さんでした。
 高山家には、大きなプレハブをベースにセルフビルドで建てたというユニークさと、そのエピソードを越える洗練された暮らし方に、日本だけでなく世界のメディアが取材にくるほど。
 今回は「めったに見せたことがない」というキッチンの最深部(!?)に、潜入させていただきました。


 やきものの里で知られる栃木県益子町。後ろには山、前には田んぼと、豊かな自然に囲まれて、高山家はぽつんと建っていました。


 宇都宮から移住してきたのが、17年前のこと。セルフビルドで住まいを造りたい、と考えていた英樹さんが選んだのは、2階建てのプレハブキットでした。プレハブのよさは、柱のない大空間が作れること。そして、工期が短いこと。本当は英樹さんご自身で建てたかったそうですが、専門業者に依頼したらなんと1日で建ってしまったとか。
 こうして住まいの形は、柱なしで作れる最大限の長さに合わせて5間×5軒の正方形の箱形に。1階は80平米を越える広いワンルーム。ダイニングテーブルがふたつ、ハンモック、ソファと家具によって、大空間の気持ちよさを損なうことなく、ゆるやかにくつろげる場をつくっています。

目次に戻る

 

 

DIYが基本。キッチン本体ももらってきたもの

 「家ができたときは一部の窓にはサッシもはまってなかったし、キッチンもなかったんです」と純子さん。よくよく聞くと、水道も電気も通っておらず、もちろんトイレもお風呂もない。料理はどうしていたかというと、「庭に仮設キッチンを作ったんです。外からホースで水をひいて、カセットコンロを置いて」。暑い時期はパラソルを立てていたというから、その風景を創造すると牧歌的で笑ってしまいます。
 「夏はいいけど、冬は笑えないですよね。だから、寒くなる前になんとかしてって頼んだんです」。そこで、華々しく登場したのが今のキッチン。取り壊しされる一軒家からもらってきたそうで、初めて水道から水が出たときは一家で拍手の嵐だったそう。「最初は眺めがいいかな、って窓のほうを向いて料理ができるように置いていたんです。でも、家族に背中を見せるのも寂しいなって、途中で向きを変えてもらったんですよね」(純子さん)。え、キッチンってそんな自由に向きや位置って変えられるんですか?と驚いていると、「水道の工事は自分でできるようになったし、今でもこのキッチンは固定していないから動かせるんですよ」と英樹さん。
 「キッチンの奥は取材を受けたことがないから恥ずかしい」と笑う純子さん。
逆L字のようなキッチンのカウンターの奥には冷蔵庫や食器棚が並び、使い勝手がいいように、息子の源樹さんがまだ小さいときに一緒にDIYしたという棚が。炊飯器が置かれた棚は、途中でオーブントースターが置けるようにと増築(!)するなど、どんどん必要に応じて形がかわっていくのがおもしろい。
 食器棚は、もらったものを黄色にペイント。木工作家である英樹さんだったらなんでも作れるのでは?という質問には「バランスですかね!やり過ぎないというか。いつかは作るかもしれないですけどね~」とのこと。

目次に戻る

 

 

家族の役割分担

 益子には以前から各々好きな器に料理を盛って集まり、食事をする文化があるそう。
高山家はその持ちよりの場になることが多く、2014年には雑誌「KINFORK」が世界25都市で同時開催したギャザリングイベントの日本会場になったことも。家族だけの普段の食事はどんなふう?
「いやいや、普段は淡々としていますよ」
 料理をするのは、純子さん。テーブルセッティングは英樹さん。源樹さんがふたりを手伝います。食後は、英樹さんが食器を洗い、それを純子さんが拭き上げ、源樹さんが食器棚に戻す。ものすごいスピードで片付けてられていく、3人の息の合ったフォーメーションぶり。淡々としている、というけれど、料理を作り皿を並べる間も、食べているときも、片付けているときも、ずっと3人でしゃべっていて実に楽しそう! 源樹さんが、ジョージアの山中で見かけたパンを振り回して客引きするパン屋のおばあさん達の様子を実演したり、英樹さんが「エッセイとして書きなさいよ」とアドバイスしたり。純子さんは、そんな様子をにこにこと眺める係。

目次に戻る

 

 

いつものごはん

 朝食によく登場するのが発酵させずにできる自家製パンで、人呼んで「純ちゃんパン」。そこに、バナナ、リンゴなどの果物にバターや甜菜糖などをちょっと加え、さっと熱を通した「easyジャム」を添えていただきます。この純ちゃんパン。スコーンのようなさくさくした食感で、そのおいしさに陶器市のときに益子のホテルに泊まっている友人がホテルで朝食をとらずに、ここまで食べにくるとか。バナナ、りんごのあたたかいジャムはさっぱりしていて、ヨーグルトに入れてもおいしい。

目次に戻る

 

 

「ジュンちゃんパンとeasyジャム」

ジュンちゃんパン

(A)
中力粉           1カップ
牛乳            3分の1カップ
ベーキングパウダー     小さじ1
(アルミニウムフリーのもの) 
塩             少々

菜種油           大さじ3

  1. Aをさっくりと混ぜる。
  2. フライパンに菜種油をひく。
  3. 生地をフライパンの上でのばして蓋をする。蓋についた水分を拭き取りながら弱火で15分ほど焼く。
  4. 裏返して5分ほど焼く。
easyジャム

バナナまたはリンゴ
バター
甜菜糖
シナモン

  1. フライパンでバターを溶かす。
  2. バナナ(またはリンゴ)をスライスする。
  3. スライスしたものをフライパンに入れ甜菜糖をまぶして蓋をし、中火で少し柔らかくなるまで火を入れる。
  4. 仕上げにシナモンを少々振る。

目次に戻る

 

 

愛用の道具

 食器棚には、益子で作陶する陶芸家による器や、英樹さんが定期的に展覧会を行っているサンフランシスコの「ヒースセラミック」の器がずらり。「顔や人柄を知っている人のものを買うようにしています」。今回の、愛用の道具はせっかくなので英樹さんがつくったものを。

 サーバーにも使える大きなへら。柄の部分がゆるやかにカーブしているので使いやすい。今は、あまり作っていないそう。


 様々な樹種を使ったカッティングボードとトレイ。


 「お世話になった人にプレゼントしようと思って」と、源樹さんが作った鍋敷き。つるつると気持ちがいい肌触り、少しゆがんだ形はオブジェとしても。出来上がりの良さに英樹さんが「これは置いとこう」と奪われてしまい、次を製作中とのこと。

目次に戻る

 

 

高山純子さん

東京都世田谷区出身。東京でネイリストとして働いていたときに英樹さんと出合い、北米やヨーロッパ、南米、アジアなどふたりで旅をする。1993年に結婚し、1995年に長男の源樹さんを出産。ものづくりの快適な地を求め、2002年に宇都宮から益子へ移住。200坪の土地にプレハブを建て、夫婦でセルフビルドで家をつくる。英樹さんが新しく庭にギャラリーを作っていること、高校卒業後、イタリアで働いていた源樹さんが帰国したことなど、また暮らしに広がりが生まれる予定。

 

キッチンデータ/持ち家プレハブ2階建て 栃木県益子町

目次に戻る

 

取材・文/柳澤智子
写真/萬田康文

 


おすすめアイテム

もっと見る