【リレー連載vol.30・田川薫さん・優美さん】

2019.04.26

良き毎日を過ごしている人は、食べることを大切にしている。キッチンにも、その人らしさがあふれている。そんなgoodな風景が広がる、キッチンをリレー式でお届けします。

 

 

なかなかお目にかかれないグッドな賃貸物件! 
海あり、山あり、味ある日本家屋

 「渡辺さんは、大学の後輩だったんですよ」。
 vol.29で登場した渡辺芽実さんから紹介していただいた、田川薫さん。
 ジャズ研究会で一緒だったというふたり。在校年はまったくかぶっておらず、お互いが卒業してから渡辺さんが主宰するイベントに田川さんが音楽家として出演依頼されたり、逆に田川さんが主宰するイベントの渡辺さんがワークショップで参加したりと、「同期より仲良くしているかも」という少し変わった先輩後輩の仲。

 薫さんが妻の優美さんと暮らすのは築50年の一軒家です。海岸まで歩いて10分。周囲は静かな住宅地で、環境の良さはなかなか出てこない優良物件とか。
 2年前、優美さんと結婚。別の家探しをしたこともありましたが、今以上気に入る家がなかったそう。ちなみに、間取りは5K。1階は玄関を入るとキッチン、和室が2部屋、洋間が1部屋にバストイレ。2階は、和室2部屋。
 「LDKとかじゃないんですよ。4畳半くらいだからKなんです。こんなに広い家なのにどうしてキッチンだけがこんなに小さいのか不思議(笑)」(薫さん)
 確かに、家の大きさに対してこぢんまりしたキッチン。「玄関と同じくらいしかない!」とふたりは笑いますが、その玄関は相当な広さ! 玄関は立派(応接間もある!)、台所は日陰に。昭和の家らしいハイカラさではありませんか。

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家の広さに対して、こぢんまり。
だけど、居心地のいいキッチン

 さて、そのキッチン。とても使い勝手がいいように、工夫がされていました。自らを「無類の木箱好き」という薫さんらしく、食器棚はりんご箱をいくつも組み合わせて。前の住人がとりつけた、というキッチンカウンター右手にある白い棚には、またまた木箱を利用して酒器や抹茶椀を飾る場所に。洗った食器を乾燥させるのは、職人の手仕事のていねいさを感じるまたたびのかご(水分に強く、かびにくいんです!)。古いものや、日本の気候に沿った昔ながらのものが存分にいかされています。
 優美さんいわく「私が持って来たものは、ほとんどないんです。生活に必要なものは十分すぎるほどあったので……」。結婚するにあたってのお引っ越しは、優美さんのお母様が運転する普通車(トラックやハイエースとかでなく)にて、実家から新居への片道だけで終了。「ずいぶんと、ものが少ない嫁入りでしたね」。
 それから2年。ものが増えることもなく、「お互い、好きなものが似ているかな?」という夫婦らしく、ふたりにとって料理をするにしても食事をするにしても、ちょうどいいキッチンになってきているよう。

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葉山名物? 太陽をさんさんと浴びた夏みかん

 ふと見やればオブジェのようにごろんと置かれた夏みかん。「庭先に夏みかんが繁る家が多いんですよ。葉山には御用邸があるからなんですって」。というのは、昭和34年の秋仁さまと美智子さまのご成婚にあたり、近隣に夏みかんの苗が配られたことにより、多くの家の庭先に夏みかんが実ることとなったとか。太陽がたっぷり注ぐ葉山の気候のよさを表す、夏みかん。「もうたわわ過ぎて。何十個と実るのでとり放題なんです。知人の木からたくさんもいでは、酵素シロップにしています」

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田川家の引力。
2匹のきょうだい猫と古書にあり

 友人が多く遊びにくる田川家。東京育ちの優美さんの友人は海に行きたい!とやってきます。それから、「猫と遊びたい」という友人も。田川家には、ニンとヤマという猫も暮らしています。「きょうだいなんです。保護猫で、2匹一緒にひきとりました。ニンはわりと人懐っこい性格。ヤマは鏡の後ろにいることが多いかな。うち、だだっ広くて隠れる場所がないから、ここくらいしかこもれる場所がないんじゃないかなあ」
 そして、もうひとつ大きな魅力が本の多さ。薫さんは、兄と姉と一緒に古本ユニット「古書 田川庄助」としても活動するほどの古書好き。「正月にきょうだいが集まって古書やるか、と盛り上がったんです。兄が得意とするのは70年代的サイケデリックなカルチャー。姉は映画パンフレットと官能小説。僕が一番買いやすいジャンルで、生活や山に関する本を仕入れています」。
 薫さんの趣味嗜好を具現化した、ともいえる家のあちこちにある木箱を利用した本棚には、コミックから小説、伝記、随筆と洋の東西を問わず時代も問わず、思わず手が伸びる本が並んでいます。
 窓から入る海風を感じ、畳でごろごろしながら本を読む。それって最高じゃないですか。田川家には、「ゆっくりしてってねー」とおおらかな夫妻のお人柄、それから、今や失われるつつある古い日本家屋にどこか夏休み感が漂っていて、来る人をのんびりさせてしまう魔力があるようです。

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いつものごはん

 薫さんが得意とするのは、ドライカレー。「料理本を読んだりしないので、順序がめちゃくちゃかもしれませんが……」。適当に作って、でもおいしい男の料理。
大量に作ってストックもするとか。カボチャやパプリカなど季節の野菜を焼いて乗せると、さらに美味。

 

「ドライカレー」

ひき肉       600g
人参        2本
玉ねぎ       2個
スパイス、塩、適量
醤油、ケチャップ  少々
ローリエ      2枚
サラダ油      適量
季節の野菜(乗せたいもの) お好みで

  1. 玄米を圧力鍋で炊く
  2. 十分に熱したフライパンに油をひいて、みじん切りにした玉ねぎと人参を炒める。玉ねぎがあめ色になったら、火を止めて容器に移しておく
  3. ひき肉を炒める。十分に火が通ったら、2を加える。
  4. スパイス、ローリエ、塩、ケチャップを加えてさらに炒める。
  5. かさが減ってきたら醤油を加え、味加減を塩でととのえる。
  6. お好みの野菜を焼き色がつくまで焼く。
  7. 15を混ぜてドライカレーし、6をトッピングする。

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愛用の道具

木箱を見ると買わずにはいられない、という薫さん。古道具屋や道ばたに捨て置かれた箱を見ると、必ず持って帰るとか。材質は木に限らず、鎌倉名物・鳩サブレーの缶箱もストック。


薫さんのおじさまは、益子で作陶するベテラン作家・佐藤巧さん。辰砂という釉薬を使い、赤褐色の陶肌が特徴です。「うちの器はほとんどがおじの作品。シンプルで料理を引き立ててくれて使いやすいんです」(薫さん)


毎朝、挽きたての豆でコーヒーを飲むという田川夫妻。コーヒーの道具は、優美さんの担当。「コーヒーミルは、いただきもの。コーヒーのカップをのせた木のトレイは、夫が出演したイベントに出展していらっしゃった木工作家さんのものです」。ただ買うだけではない、愛用品にはなにがしかのご縁が必ずあるといいます。

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田川薫さん

音楽家。ウクレレ、口笛、ハンドベル、鍵盤ハーモニカ、玩具、タイコなどを中心にソロやバンド「ごがつの日」として活動中。海近くの自宅兼スタジオ「umi studio」にて歌を作ったり絵を描いたり、俳句を詠んで暮らす。
兄姉とともに古本ユニット「古書 田川庄助」としても活動。

田川優美さん

高校2年生でカメラ「Lomo LC-A」を買い、写真を撮り始める。大学卒業後、文具メーカー「DELFONICS」に勤務、2012年より、写真屋「monogram」勤務。田中優美名義で、写真展、写真集などを通じ作品を発表。
4月29日~5月12日 写真展「忘れえぬ風景」を、monogramにて開催予定。

 

キッチンデータ/神奈川県・賃貸・木造2階建て

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取材・文/柳澤智子
写真/萬田康文

 

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