【リレー連載】vol.1 福田春美さん(ブランディングディレクター) 前編

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2015.10.20

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家の中でも特にキッチンには、暮らす人の趣向、工夫、そして物語がつまっているように思います。
使いやすいようにどんな工夫をしているの?
どんなふうに過ごして、どんなごはんを食べているの?
いろいろなキッチンをリレー形式でめぐり、暮らす人の「作って食べる」に隠れた物語をうかがいます。

 

vol.1 福田春美さん(ブランディングディレクター) -前編-

住まいは低層の集合住宅。キッチンとリビング合わせて20畳という広さ。ここで愛犬のリタと暮らす。

 

「おなががすいている人をほっておけない」という女将気質

長くアパレルでディレクターとして活躍し、現在も「CorteLargo(コルテラルゴ)」、原宿とシンガポールにあるギャラリー「EDIT LIFE」、そして香りと洗剤のブランド「a day」といくつものブランドのディレクションにかかわる福田さん。
たくさんの仕事を切り盛りするだけあって、とても面倒見のいい女将気質な人でもあります。
打ち合わせのために自宅に訪れる若いスタッフに「お腹が空いていない?」「何か食べる?」と、必ず声をかけてしまうとか。
「お腹が空いている人がいるのがいやなんですよね(笑)」。

 福田さんは、札幌の出身。魚市場のそばで銭湯を営む両親のもと、三姉妹の二番目として育ちました。
「とにかくお客さんの多い家でした。市場の人たちは仕事帰りに銭湯に寄って帰りますし、近所付き合いも盛ん。祖父母と同居していて、祖父は華道、祖母は三味線、父は茶道、母は日本舞踊を教えていたので、それぞれの生徒さんもいらっしゃる。そうそう、下宿人もいたのでとにかく人がいっぱい!
 だからお手伝いの方もいたし、私たち姉妹がほぼ一日台所にいましたね。食卓にはドン!と茹でたてのとうもろこしが山盛りになっていたり、おでんやカレーはもちろん大鍋。忙しい母に“春美、ルー入れといて!”と言われて。小1から私の仕事は、カレーにルーを入れることでした。お腹が空いている人をほっておけないのは、こういう環境で育ったからなのかも」。

 そんな包んでくれるような福田さんを慕って、夜になると仕事仲間が家に飲みに訪れます。
「友人が遊びに来るのでそれをフェイスブックにあげたりすると、近くに住む別の友人が私も今から行くよ〜、とやってくる(笑)」
 福田さん宅での集いは、「Hamiru(ハミル)亭」と呼ばれていて、年末になると、仕事納めをした解放感からかあちこちから忘年会を終えた友人がやってくる。友人がさらに友人を連れてくるものだから、なかにはHamiru亭を予約制の会員バーだと勘違いしてくる人も。
「うちは収納が少なくて食器や道具がオープンになっているから、どこに何があるかみんなわかってくれていて。私が準備しなくても、どんどんグラスを出したり料理を作ってくれる(笑)」
 ちなみに福田さんはお酒が飲めません。夜も深くなり、カーペットの上で眠ってしまった人に、福田さんはブランケットをかけてまわります。ここでも、福田さんはみんなの女将!
「10人もいると寝落ちの曼荼羅のようですよ。うちに足りないのは収納とブランケットだな、とブツブツいいながら、おふとんかけてます」。

 

03

もともとは収納が全然なかったというキッチン。大家さんの許可を得てプチリノベを。ガス管と木の板を組み合わせた棚(写真A)は、仕事仲間である内装デザイン会社F.H.C.の土屋豊さんとSMILIESの阿部臣吾さんに頼んでつけてもらったもの(福田さんが関わるギャラリー、EDIT LIFEでもオーダー可)。イケアのワゴンを使ったり(写真C)。写真Bのステンレスと古材を組み合わせたワゴンは、お店の什器として作ったもので残念ながら非売品。

 

米とぎザルや味噌こしザル、たわし、エプロンは吊るすことで手が届きやすく、また乾かせるので衛生的。S字フックはアメリカのホームセンターなどで購入したものが多い。キッチンは最近リノベーションをし、N.Y.の地下鉄に使われる白いタイルを貼り、棚も同時に取り付けてもらったとか。棚上の民芸や作家ものの壺の中身はすべて塩。塩は、沖縄やフランスなど産地によって味が違うので、料理に合わせて8種類を使い分けている。

 

「築地市場はパリコレと同じ。初めて行った時は鳥肌がたった」

友人を招いて自宅で食事をする時は、築地市場に買い出しへ。
「自分が市場のそばで育っているので、魚はお魚屋さんのものがおいしいと思うし、スーパーよりは専門で買い物をしたいなって」。
とはいえ、築地市場は、場内とはいえど素人がいきなり行っても買えるような場所ではありません。
「江戸懐石を習っていたのですが、その先生に連れて行っていただいて、2年通ってようやく自分ひとりでも買わせてもらえるようになりました」。

憧れだった築地市場に入ったとき。その躍動感と迫力に、はじめてパリコレでマルタン マルジェラのショーを見たときと近い感動を味わったとか。
「鳥肌がたちましたよ。うわー、市場ってかっこいいって。何度も通うと覚えてくださって親切にしてくださるし。もうすぐ移転してしまうから、そうなる前に興味がある友人を連れて行ったり、せっせと通っているんです」。

 

<後編へ続く>

 

写真/永田智恵
取材・文/高橋紡

Writer's Profile
Harumi Fukuda

1968年生まれ、札幌出身。アパレルブランドにてバイヤー、ディレクターをつとめた後独立。さまざまなブランドのディレクションを手がけ、自身のブランドも立ち上げる。現在は、「CorteLargo」「a day」のブランドディレクター、ギャラリー「EDIT LIFE」のディレクター3つのプロジェクトを進行中。ここ最近のテーマは「旅に出ること」。今年の夏には、アメリカを車で旅し、国内はほぼ隔週末ごとに愛媛、岐阜など地方に訪れている。


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