vol.15 ピアノの調律師ならぬ「からだの調律師」を訪ねて
「年齢を重ねると、女の人はこころもからだも、いろいろありますよねぇ」。
フォトグラファー・大段まちこと、フリー編集者・井尾淳子、「お年ごろ」を迎える2人が「こころとからだ」を元気にする浄化スポットを訪ねます。
vol.9の足裏マッサージの回で登場したクラリネスタッフ・箕浦さん(30歳女子)をご記憶でしょうか?(お忘れの方は、ぜひ再読を!)足裏施術では、恋愛傾向などを赤裸々に語ってくれた箕浦さんと、久しぶりに再会した私たちだったのですが……。「じつはまた、スッキリしない状態なんです」と、何やらお疲れの様子。「じゃあ、今の箕浦さんにぴったりのところに行きましょう」という大段さんの案内で、私たちが向かった先とは?

東京・恵比寿にあるTuning salon 円環 (えんかん)。その名のとおり、「こころ(感情)とからだ(身体)の調律(チューニング)」をしてもらえるサロンなのだとか!
ほとんど触れていないのに、からだはスッキリ!?
柳木 今日はよろしくお願いします。
…と出迎えてくださったのは、「Tuning salon 円環」代表の施術師・ 柳木俊介さん。おぉ、なんだか雰囲気のあるイケメンです。
大段 じつは私もこの前、柳木さんの身体調律セッションを受けたんですよ。とってもスッキリしました。
井尾&箕浦 へぇ〜!
井尾 こちらのメニューの身体調律、感情調律というのは、どんなセッションなんですか? めっちゃ興味深いんですけど。
大段 柳木さんの身体調律セッションは、触れたのか、触れていないのか、ほとんどわからない感じ。それなのにからだのつまりがスッキリするという、なんとも不思議なセッションなんです〜。
柳木 たしかに説明が難しいですよね(笑)。僕の施術は、古代中国医学や現代医学の知識と技術をベースに組み合わせた手技療法です。ざっくりいうと、筋肉反射テストでからだの状態を観察して、さまざまな可能性を探りながら、治癒に必要な情報を身体にプログラムしていきます。

中国雲南省の中医大学で7年間も中国医学を学んだ柳木さん。鍼灸、漢方、気功などの修業を積む中で、「さまざまな土地、時代に合わせて編み出された中医学という治療法のダイナミックさに、心意気を感じました」(柳木さん)。
私たちのからだは、「異物」を認識できなくなっている
井尾 なんとなく…わかり…ました。
柳木 もう少し補足しましょうか(笑)。今の世の中、生活環境が細分化されて、とても複雑になっていますよね。そのせいで、からだの治癒能力が環境の変化に追いつけなくて混乱し、正確に機能しなくなっています。要するに、からだがどういう方向に治していいか、わからなくなっているんですね。
井尾 ははぁ。
柳木 たとえば、現代人のほとんどは環境汚染の影響で、つねに化学物質などの刺激にさらされています。そのため、からだが溜め込んだ老廃物を異物として認識できなくなっているんです。
大段 だから、からだに溜まり続ける老廃物も、うまく排出できないんですね。
柳木 そうです。からだが老廃物を異物と認識できなくなるので、本来ならスムーズに体外に排出されるべきものが、どんどんからだに蓄積されて、からだに悪影響を及ぼしているんです。からだがむくんだり、だるくなったり。
井尾 えっ。そうなんですか。私、からだがむくみやすいんですけど、そういう老廃物が原因なんでしょうか。
柳木 あとで診てみましょう。そこで僕が行うのは、「それは、からだにとって異物ですよ」と認識させるだけです。するとからだは、異物として排出しようと機能しはじめるわけです。汗とか、尿とかで、ですね。
井尾 ナルホド〜!
大段 じゃあ早速、箕浦さんをモデルに実際のセッションの流れをお願いします。
箕浦 わー、ぜひ!(わくわく)

いろいろな化学物質などの写真に触れて、筋肉反射テストを行うのが、円環の「身体調律」の施術の特徴。さまざまな修業を積んでいる柳木さんには、クライアントがどの物質に反応しているのかがすぐにわかるようです!
いざ、「身体調律」施術を体験!
柳木 「理由はわからないけど、近ごろ体調不良」という方は身体調律を、「感情のわだかまりを抱えている」という方は感情調律になります。箕浦さんはどうですか。
箕浦 うーん、気分はモヤモヤしていますが、体調のせいかも? 最近、頭痛がなかなか治らなくて、気持ちが悪いんです。疲れをずっと引きずっているのか、あとはむくみもあるし、スッキリしない状態が続いています。
大段 それはつらいですねぇ。

箕浦さんの症状を聞きながら、不思議な手の動きでからだの状態をチェックしている柳木さん。たしかに、ほとんど触れていないように見えます!
柳木 胸のモヤモヤは気分ではなさそうですね。おそらくですが、風邪の初期症状ではないでしょうか。そしてからだがスッキリしない感覚やだるさ、むくみは、からだに溜まった老廃物のせいだと思います。
箕浦 ずっと忙しかったので、たしかに疲れは溜まっていたかも……。
柳木 それと箕浦さんは首と肩に力が入りすぎていて、そのせいで気が上に溜まりやすいようです。とくに、首に力が入っているんじゃないかな。
箕浦 すごい。私ストレートネックなので、普通にしていても首に力が入りがちなんです。

サロン名の「円環」は、「身、心、氣」がまるい環となるよう、バランスを整えることに由来しているそうです。
まずは問診で「原因」を探る
柳木 今、肩はこっていますか?
箕浦 はい。めちゃくちゃこっています。
柳木 質問を変えますが、なぜ自分の肩はこっていると思いますか?
箕浦 パソコン仕事のせいでしょうか。あと、歯医者さんでは「食いしばりが強い」といわれるし、整形外科だと「ストレートネックでスマホ首」といわれるし。
柳木 ちなみに、肩こりっていうのはじつは、からだを守るために起こっているんですよ。
井尾&大段 えー!
柳木 肩がこるというのは、「肩まわりの筋肉が固まっている」状態。箕浦さんの場合、機能低下している首を守るために、僧帽筋が自然のコルセットの役目をしてくれている、ということ。
井尾 むしろからだを守るために、肩がこっている、と。
柳木 そうです。肩こりを治そうとマッサージに行けば、一時的にラクになるけどすぐ戻りますよね。でも、「首を守るために肩まわりの筋肉が固まっている」という肩こりの根本原因を考えれば、もとに戻るのは当たり前。だから、ストレートネックという原因をなくしてあげれば、肩こりは治ります。つまり、肩はこる必要がなくなるんです。
大段 治してあげてください!
箕浦 私、首を後ろに倒せないんですが、それってストレートネックと関係ありますか?
柳木 あると思いますよ。

「箕浦さんの場合、側弯症傾向にありますね」といいながら、繊細な動きで何かをはじくように手を動かし続ける柳木さん。箕浦さんの首元で、一体何が起こっているのでしょう……。
「なぜこうなったのか」ではなく「なんのためにこうなっているのか」が肝心
不思議な手技に魅入っている私たちをよそに、箕浦さんの施術は淡々と続きます。すると、「後ろに倒れない」といっていたはずの箕浦さんの首が!

首が後ろに倒れた! 一体なぜ? 驚愕する私たち!
箕浦 えーっ! こんなに首が曲がったのは、10年ぶりくらいです! びっくり!
井尾&大段 すごい〜!
箕浦 学生時代、整形外科で「ストレートネックは治らない」といわれたときは、一生付き合っていくものなんだ……って、絶望的になったんです。なのに今、信じられないくらい首が軽い!! 視界もクリアになってスッキリ〜。
柳木 それが本来の箕浦さんのフラットな状態なんですよ。でも重要なことは、治ったことそれ自体ではありません。
井尾 と、いいますと?
柳木 首が曲がらなくなった原因が生活習慣にあるならば、きっとまた曲がらなくなるし、肩もこります。大事なのは、再発したときの行動や精神状態を振り返り、分析すること。そうすることで、からだが何をしたくてそうなったのか、気づいてあげられるようになることが、次のステップです。
箕浦 たしかに、自分で理解できれば、納得できますよね。
柳木 からだって、「なぜこうなったんだろう」ではなくて、「なんのためにこうなったんだろう」と考えたほうが、辻褄が合うんです。
一同 納得!

箕浦さんの足元を診ながら、「大腿骨に傷がついていて、ひざもかなりゆるんでいます」(柳木さん)。
その人らしい、“美しい音”を奏でるために
「全体的に関節がゆるんでいますね。締めたほうが、からだは使いやすいですよ」と、今度は箕浦さんの手にかるーく振れる柳木さん。

箕浦 おーっ! 今、手のむくみがスーッとなくなりました!
柳木 これは「骨格調整」という施術です。関節がゆるんでずれていると、からだのめぐりが悪くなるので、むくみやすくなるんですよ。
大段 へぇ〜。私もやっていただきたいです。
柳木 大段さんは、職業柄カメラをいつも持っているせいで、関節にねじれがありますね。
大段 この前ヨガ教室に行ったとき、手の動きが私だけ違っていたんです。違う方向にねじれていて。
柳木 でもそれは、フォトグラファーとして「カスタムされたからだ」なんだと思います。だから、痛みがあるとか、疾患としてからだに出ていない限りは、生理的にまっすぐにしないほうが、僕はいいと思う。「カメラを持ったときに最高のパフォーマンスになる手」になっているわけですから。
大段 ほほ〜。
井尾 なんか、カッコいいですね〜。「職業的にカスタムされたからだ」!

最後は、うつぶせで再び施術。「ここまで仮止めした流れ(治癒の経路)を、最後に決定するというプログラムを行っています」(柳木さん)。仮縫いから本縫いへ……。いちいち不思議で面白い施術です(笑)。
「身体調律」とは、人間理解だった!
「少し曲がっているからといって、たんにもとに戻せばいいというものでもないんです」と柳木さん。
柳木 なぜかというと、「生理的にまっすぐなからだ」にしてしまうと、その人らしさや個性が消えてしまうから。なので、たとえば音楽家の方を施術するときは、とても気をつけます。生理的にまっすぐなからだにしてしまうと、奏でる音まで変わってしまうんですよ。実際に音を出しながら、「この音でいいですか」と聞きながら、少しずつ角度を変えていくんです。
大段 繊細な作業ですね〜。
柳木 そうじゃないと、ブルースが消えてしまうので。
井尾 ブルース! なるほど〜。
柳木 その人のブルースが消えないように、楽器に伝わる角度はどこまでなのか。そこを探していくのが面白くて。つまり「調律」という施術は人間理解なんです。
占いのように、当たるか当たらないかではなくて、「あなたはどういうからだでありたいですか?」「楽器にたとえるなら、どういう音を奏でたいですか?」というオーダーがあってこそ、理解が深まって、お互いにとって面白い施術になるという柳木さん。
柳木 だから、「おまかせします」というよりも、「どうなりたいか」を自発的に、具体的にリクエストしてほしいですね。
井尾 どのフィールドで、どういう音を奏でるからだでありたいか。だからこその「調律=チューニング」なのか〜。
大段 まさに、「からだとのセッション」という表現がぴったりですね。
柳木 そうすると、いろいろな個性を持っている自分のからだのことを、「自分のままでいいんだ」と受け入れられるようになります。そこから、「どうすればもっと進化できるかな?」ということがはじめて考えられるようにもなるんですよ。
ピアノの調律のように、からだを理解し、調律してもらえる施術、ということがよくわかりました!
井尾 不思議でしたけど、ピアノの調律のような美しい施術でしたねぇ。
大段 ピアノになった気分でした。
箕浦 でも、この首の軽さは本物です。ほんとにスッキリ!
井尾&大段 良かった〜。
それぞれに腑に落ちた私たちは、ピアノのメロディのような軽い足取りで、柳木さんのもとを後にしたのでした。繊細で美しい施術を体験したい方、おすすめです!
▼Profile
大段まちこ
フォトグラファー。かわいいもの、雑貨、ファッションなどをテーマに女性誌やライフスタイル誌で活躍。
井尾淳子
フリー編集者。子育て雑誌の編集経験を経て、現在は書籍、Webコンテンツなどの編集、執筆を中心に活動。
柳木 俊介
「Tuning salon(チューニング サロン) 円環」 代表。中国雲南省中医大学卒業。在学中から呂光栄老師をはじめとする多くの中医師のもとで、中国医学(鍼灸、漢方、推掌、気功)の修業を重ねる。7年半の中国生活を経て2013年に帰国。その後、4年間の日本での施術活動を経て自身の円環メソッド「身体調律」を確立。現在東京、新潟、長野、富山にて身体調律師として施術活動を展開中。 予約希望の方は、下記のコードより登録、LINE@にて。予約のコードと一緒に、LINEにて「@enkan」で検索しても登録可能です。
メールアドレスは、enkan888@gmail.com
※サロンの場所は、予約された方に直接ご案内させていただいております。