vol.20 見つけた! からだがゆるむ「鍼」~表参道・源保堂鍼灸院を訪ねて

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2019.03.29

「年齢を重ねると、女の人はこころもからだも、いろいろありますよねぇ」。
フォトグラファー・大段まちこと、フリー編集者・井尾淳子、「お年ごろ」を迎える2人が「こころとからだ」を元気にする浄化スポットを訪ねます。

「イオさん、私最近、まったく痛くない鍼治療院を見つけたんですよ!」とは、相変わらず情報通な大段さん。たしかに鍼治療って効きそうではあるものの……。「痛そう」とか「怖そう」というイメージがありますね。


大段さんの話を聞いて、私も早速、施術に行ってまいりました! その鍼灸院とは、東京・表参道の「源保堂鍼灸院げんぽどうしんきゅういん」。二十四節気に合わせた丁寧な診療で人気です(詳しくは、文末プロフィールを参照)。


井尾 大段さん! 例の鍼灸院の「効いた感」がすごかったです! 

大段 そうですか〜。よかった。 

井尾 全然痛くなかったし、しかも、いつ鍼がさされたのかもわからないくらい。すっかりからだがゆるみました!

大段 私も、鍼であんなにリラックスできたのは初めて。本当に驚きました。


ということで、早速取材に訪れました。こちらが、源保堂鍼灸院の院長・瀬戸郁保せといくやす先生。


使う鍼はたった1本だけ!

2人 今日はよろしくお願いします。 

瀬戸先生 こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします。

井尾 先日体験してびっくりしたのは、たった1本の鍼しか使わない施術だったことです。

大段 そうそう。普通の鍼治療というと、背中にたくさん鍼をさして、「針山」状態になりますよね。

瀬戸先生 それがスタンダードですよね。でも、当院では鍼は1本だけ。治療に必要なツボだけに鍼をさして、また抜いて、べつのツボにさして……と、一穴一穴、確実にツボを作動させるようにしているんですよ。

大段 なるほど。

井尾 治療もわずか30分。部位別や時間別などのメニューもなく、シンプルですよね。
(※初診時のみ1時間)

瀬戸先生 はい。経絡の流れは約15分で一周するので、闇雲に時間はかけませんし、鍼も1本しか使用しません。その方がからだに負担がかからないですし、的確に変化を促すことができるので、脈がすぐに変わって反応が早いというメリットがあるんです。


源保堂鍼灸院で使用している「八分長柄鍼(はちぶちょうへいしん)」という鍼。とっても細いです!


瀬戸先生
 太さでいえば、0.16ミリ日本人の髪の毛の太さは約0.08ミリだそうなので、髪の毛よりも少し太い程度のものになります。

大段 こんなに繊細な鍼をさしていたんですね。

井尾 だから、まったく痛みを感じなかったんでしょうか?

瀬戸先生 細い鍼を使用していることもありますが、でもそれだけが理由でもないんですよ。

井尾 と、いいますと。

「こちらの文章を見てください」と、私たちに古い本の一ページを示す瀬戸先生。


「これは、張介賓(ちょうかいひん)という、中国の明時代の医師が書いた『類経』というものです」(瀬戸先生)。 中国最古の医学書「黄帝内経(こうていだいけい)」を解説した本なのだそう。


瀬戸先生 ここに、「蚊虻(ぶんぼう)」という文字があるのがわかりますか。蚊やアブのことなんですけど。

井尾 ありました! 最後から2行目のとこ。

瀬戸先生 これは「蚊虻のクチバシのごとく細き」と、鍼灸治療のポイントについて書かれているんですよ。つまり、「鍼をさすときは、蚊やアブのクチバシのように細く、そして蚊やアブのようにいつ刺されたか分からないように」ということですね。


先生の鍼治療は、「今、さしました?」というくらい、「蚊虻のクチバシ」のようなささやかな感触です。


大段 先生の鍼は、まさにそんな感じでした。


からだがゆるむ三種の神器「鍼・灸・つぶ」。

井尾 ほかにはどんな道具を施術に使いますか?

瀬戸先生 さきほどの鍼のほか、お灸と合金の「つぶ」を使います。お灸は主に、写真の「上質もぐさ」です。


上質もぐさは、原料のヨモギの裏に生えた毛だけを集めたもの。とても柔らかく、ふわっとしています。


やけど予防の紫雲膏(しうんこう)という漢方の軟膏(華岡青洲が作ったとされる和漢薬)をつけたあと、米粒大にまとめたもぐさに火をつけていきます。「熱くないよう、火はいちばん下に達したときに消します」(瀬戸先生)。


井尾
 温まりそう〜。

大段 気持ちよさそう〜。

瀬戸先生 (笑)。鍼とお灸が終わったら、「その日のテーマのツボ」に合わせて、次の写真の2種類のつぶ(マグレイン)を貼ります。


金メッキをした合金のつぶ(写真右)は、手足やお腹などに。チタンのつぶ(写真左)は、顔に。どちらも小さいので、貼ってもほとんど目立ちません!。
※貼る場所や数は、体調や症状によって異なります。

※金属アレルギーがある方には貼りません。


触診や脈診でここまでわかる!

井尾 先生は施術に入る前、脈をじっくりみますよね。

瀬戸先生 はい。施術の流れを大きくいうと、問診→触診(尺膚診しゃくふしんと脈診と適宜腹診)→施術です。問診では、かなり細かいことも伺います。多くの患者さんは自覚症状しかお話をされませんが、自覚していること以外の症状も、じつはいっぱい眠っていることがあるんですよ。それを見つけていくのが尺膚診や脈診なんです。必要があれば腹診も行います。腹診は大きな陰陽、大きな治療方針を決めたりするのに使うこともあるのですが、精気があるかどうかをお臍の下の丹田で確認することもあります。

大段 脈をみたり、皮膚の状態をみたり、というのも、ほかではあまりない施術のような。

瀬戸先生 はい。肘から先の部位を、東洋医学では「尺膚(しゃくふ)と呼びます。尺膚には大まかなからだの状態や傾向が現れます。そして脈診ではそれよりももっと細かいからだの情報が現れるので、尺膚で今日の治療方針を決めたあとは、さらにより細かく臓腑の状況をみていきます。当院では問診同様に、尺膚診や脈診、そして適宜腹診という、東洋医学独特に発展した触診をフル稼動してからだの情報を収集していきます。


肘から先、腕の筋肉が盛り上がっている部分を触ることで、胃腸の状態までみてとれるのだとか!


スルドイ様子で脈をみる先生。今日の体調はいかがなものか……(どきどき)。


井尾 なるほど〜。触った感じでわかるのがすごい。

瀬戸先生 皮膚と肺がつながっているとか、筋が肝臓とつながっているとか、ポイントになる部分を触って把握していきます。すると、問診では「食事は摂っています」とおっしゃっていたのに、肌を見るとカサカサしていて……。これは、患者さんの自己申告(問診)とからだが発している状況(触診)が合っていないことになりますから、そこで「本当にちゃんと食べていますか?」と聞くと、簡単なものしか食べていないことが判明したり……。

大段 それって、私のことだったりしますか(笑)。

瀬戸先生 すみません(笑)。お二人のようなお仕事をされている方は、忙しくて食事も簡単になってしまいがちですよね。

 鍼灸院にはさまざまな仕事をされている方がいらっしゃいますから、頭ごなしにそれを否定することはしません。でも、ある程度そこを指摘しながら改善点や妥協点を探っていくのも患者様のからだにとっては大切なことですので……。命あっての物種ならぬ、健康あっての物種ですから。

2人 耳が痛いです……。


施術室はこちら。清潔で暖かくて、リラックスできる空間です。


お年ごろ女子の症状に効くツボ

大段 私、触診で皮膚がカサカサしていたんですよ。

井尾 私も、肌は乾燥気味です〜。

瀬戸先生 お二人とも乾燥は同じでも、種類が違うんです。大段さんは代謝がうまくできていなくて、食べても血肉に変換されていないタイプのカサカサ。部位でいうと、肝臓からくるものです。井尾さんは、単純に水分が不足しているカサカサ。

井尾 そこまでわかるんですね。乾燥で悩むお年ごろ女子は多いと思うのですが……。

瀬戸先生 左側のここ(写真)を押してみてください。痛くないですか?

2人 わー! 痛―!


左側のこめかみのあたり、ココです! 押すと痛いお年ごろ女子は多いはず。


瀬戸先生 そこは浮絡(ふらく)という経脈にある、「客主人(きゃくしゅじん)」というツボです。当院では左側をよく使います。そして浮絡というのは皮膚のいちばん上、表面にあるところ。脳の表面の「大脳皮質」にもつながっています。このからだの表面部分にストレスがこびりついていると、食物の栄養が届かず、肌が乾燥してしまうんですね。

井尾 つまり、ボディクリームを塗るよりも「客主人」を押して油分を出したほうがいい!

瀬戸先生 そういうことですね。外から補うよりも、中から変わることが大事です。とくにからだの表面は、風邪やウィルスが入りやすい場所。かかとが割れていたり、手にささくれやあかぎれがあったりする人は要注意です。

大段 すごくいいことを聞きました!

瀬戸先生 もうひとつ、「中渚(ちゅうしょ)」という手の甲にあるツボも、お年ごろ女子の方の施術ではよく使います。下腹部の血流を増やして冷えをとったり、ホルモンバランスを整えたり、瘀血(おけつ)という悪い血を流してくれる効果があります。


「中渚」は、小指と薬指の間から手首方向に下がり、少しへこんだところにあります。


瀬戸先生
 生理不順などで、瘀血(血の流れの滞り)が溜まりやすいんですね。「中渚」は、そういう症状からくる視力低下改善やアンチエイジングに効果があります。


古典的な鍼灸手技「本治法」って?

こちらの施術が他の鍼灸院とは異なる点が多いのは、「本治法ほんちほう」といって、古典的な中医学の手技を採用しているから。瀬戸先生いわく「本治法の施術を学問と技術の両面から、しっかり行う鍼灸院はとても少ない」のだそうです。

「どんな症状でも、どんな状態でも、本治法のみで対応していきます」と、瀬戸先生。


大段 本治法。初めて聞きました。

瀬戸先生 「本(もと)を正す」というのが語源ですね。その対義語として、「標治法」というのがあります。「標」は枝葉、「本」は幹。つまり、「幹を直せば枝葉も治るという発想ですね。

井尾 なるほど。わかりやすいです。

瀬戸先生 ちょっと専門的になりますが。当院の本治法は「十二正経じゅうにせいけいの本治法」と「奇経八脈きけいはちみゃくの本治法」を合わせた経絡治療です。からだをめぐる経絡には、大きく「十二正経」と「奇経八脈」という2つのルートがありまして……。

大段 以前、からだの細胞にアプローチしていくセルフヒーリングセッションを受けたことがあって。それも、奇経八脈を活性化していくと聞きました。

井尾 大段さん、相変わらず詳しい(笑)。その奇経八脈とやらは、一体なんですか??

瀬戸先生 ツボをつなげた線のことを経絡といいまして、そこに“気”というエネルギーが巡っています。十二正経は縦に流れる線ですが、それを横につなげていくのが奇経八脈。この「十二正経」と「奇経八脈」は、よく河と池にたとえられます。河の水が溢れそうになると池に流し込み、河の水がなくなりそうになると池から水を放流するといった、お互いを助け合う関係です。

井尾 ほほ〜。つまり、その2つのツボの経絡を調整するツボを総合的に使えば、からだが調う、と。

瀬戸先生 そうですね。同じツボでも、十二正経と奇経八脈場所では、脈のうち方、幅の広さが変わってきたりします。

大段 そんな微妙な違いまでみていただいている、ということなんですね。

井尾 「からだがゆるむ鍼」のワケがわかった気がします! 気になる方は、ぜひ一度施術を受けてみてください。

大段 鍼のイメージが180度変わりますよ〜。

源保堂鍼灸院では、希望があれば食事アドバイスの指導もしてもらえるそう。次回は、薬膳による食事アドバイザーの瀬戸佳子さん(先生の奥様!)にご登場いただき、食からのアプローチについて伺います。お楽しみに。


▼Profile

大段まちこ
フォトグラファー。かわいいもの、雑貨、ファッションなどをテーマに女性誌やライフスタイル誌で活躍。
井尾淳子
フリー編集者。子育て雑誌の編集経験を経て、現在は書籍、Webコンテンツなどの編集、執筆を中心に活動。

 

Writer's Profile
瀬戸 郁保(せと・いくやす)

源保堂鍼灸院・院長。2000年にはり師、きゅう師、あんま指圧マッサージ師の免許を取得。2004年、鍼灸治療のエッセンスである「本治法(ほんちほう)」を治療の中心に据えた源保堂鍼灸院を表参道にて開業。鍼灸の研究、東洋医学の研究を重ねる。雑誌やテレビなどの取材、講演等でも活動中。東洋医学・東洋哲学本・古本・健康関連の本などを中心にしたブックコーディネーターでもある。
●東京都渋谷区神宮前4-17-3 アークアトリウム101 Tel&Fax 03-3401-8125
開院時間・曜日・料金(自由診療)・予約案内の詳細については、源保堂鍼灸院公式サイトを参照ください。https://genpoudou.com


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