サウナで出会うおもしろい人たち~独占権対決編~

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2018.08.14

サウナには本当にいろんな人がいます。サウナ室という狭い空間で、しかも一糸まとわぬ姿で、普段の生活では交わることがないような人たちと出会えるのはサウナの世界のおもしろいところだと思います。


これまでたくさんの個性的な人を見かけて来ましたが、オーストラリア・メルボルンのサウナで遭遇した女性のことは、たぶん一生忘れないと思います。オーストラリアは南半球に位置するので、日本とは季節が逆です。わたしが訪れた5月のメルボルンは、赤や黄色に色づいた木々で溢れる秋でした。


しとしとと降る雨の中、急ぎ足でチェックインしたホテルのジムを覗くと、奥の真っ暗なところにサウナを発見。早速部屋で荷物を開けて水着に着替えました。

ホテルの人さえも存在を忘れているのではないかというくらい、あまり使われた形跡のないまだ木の匂いがふんわり漂うサウナでした。水風呂はないけれど、この誰もやってこない静かな空間を独り占めできるなら冷たいシャワーだけでも十分、ととのいそう!(「ととのう」という感覚についてはこちら)なんて思いながら寝っ転がったり、考え事をしたり。


小さくて誰もいないテレビなしのサウナって、ドラゴンボールに出てくる「精神と時の部屋」みたいだっていつも思うんです。「精神と時の部屋」は神の神殿の中にある修行部屋のことで、真っ白で何もないこの部屋での1日は外界の365日相当。そして重力は地球の10倍、空気は地球の1/4の薄さという異次元空間。(こんな感じです。ちょっとスパっぽいですよね)

サウナ室も時間の流れが外界とは少し違うような気がするし、熱くて薄暗い部屋という異空間も相まって、精神と時の部屋感があります。サウナ室でも修行っぽく心を無にして瞑想したり、逆に考えを巡らせて頭や心を整理したりと、サウナ室でやることは人それぞれ。でもこのタイプに出会ったのは、初めてでした。

サウナ室の扉を開けて入って来たのは、たくさんの書類を抱えたスーツ姿の女性。


汗だくで座っている私の前に彼女はひるむ様子もなく座りました。いや、ひるんでいたのはわたしの方。熱いサウナ室で、水着姿のわたしとスーツ姿の彼女。全くもって異様な雰囲気です。「ここ、サウナ室ですよ」って言ってあげた方がいいのかなとタジタジになっていると、彼女は持っていた書類に真剣に目を通し始めました。


外は雨でさらには木枯らしも吹いていて寒かったので、もしかしたら採暖室の感覚で利用しているのかもしれない、と思いつつ3分が経ち、5分が経ち……。わたしは彼女が来る前から入っているので、すでに10分近くここにいるので汗ダラッダラ。対するスーツの彼女は汗ひとつかかずに書類を読み続けています。全然出て行く気配なし。もしかしたら、これはサウナ室を独り占めできる権利のコンテストなのかもしれない。勝ったほうがサウナ室独占権をゲットという……。


12分を過ぎてサウナ室を出たのは……わたしでした。スーツの彼女にサウナ室独占権をお譲りする形となったのです。完敗です。そもそもビジネススーツでサウナに入ろうという女性には、勝てるわけがありません。いくらサウナによく通っていても、サウナ・スパ健康アドバイザーの資格も持っていても、そんなことサウナ室では全然関係ないということを思い知った夜でした。好きなように好きなだけ入るのがサウナであります。大敗を喫したわたしは、シャワーをすることもなく、すばやく、そして潔くサウナスペースを完全に彼女に空け渡し、部屋へ戻ったのでした。

 

サウナでは、こんな風におもしろい人との出会いがたくさんあります。わたしは、そんな人たちに笑わせてもらったり、びっくりさせられたりするのもサウナが好きな理由のひとつだと思っています。そして今でも、あのスーツの彼女、あの後どれくらいサウナにいたんだろうと考えます。


さてと! 今日もサウナへ行ってこよう。

 

Writer's Profile
岩田リョウコ

‪ライター、コラムニスト、イラストレーター。コロラド大学大学院で日本語教育学を学び、2009年から外務省専門調査員としてシアトル日本国総領事館勤務。コーヒーのトリビアをイラストで紹介する『I Love Coffee』は月間訪問者数60万人のサイトに成長しアメリカで書籍化される。著書に『シアトル発ちょっとブラックなコーヒーの教科書』など。サウナ好きが高じてサウナ・スパ健康アドバイザー資格を取得。‬


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